再審・冤罪事件の根本原因
2010年 05月 03日
このような状況は、かつての「白鳥決定」(1975年)を契機に、再審の門が相次いで開かれ、死刑冤罪事件が4件(財田川、免田、松山、島田)も無罪となった1970-80年代の再来を思わせるものがあります。
警察・検察、そして裁判所も、かつての再審・冤罪事件の再発を防止するという約束を完全に裏切ったことになります。今回も、「足利事件」で裁判所は謝罪し、警察・検察も反省して、原因の究明と再発防止策を提言していることについては、このブログでも触れましたが(4月13日)、それが決定的に不十分なことは、これまでの再審・冤罪事件に共通する根本的な原因である「代用監獄における密室での取調べと自白の強要」と、捜査によって得られた「証拠の恣意的な不開示」に全くメスが入っていないからだと言えるでしょう。これまでの再審・冤罪事件の記録を見ても、再審段階まで隠されていた証拠が開示されたことが冤罪と判明する契機となっていることを確認することができるのです。
ところが、民主党の千葉法相は、慎重に検討すべき「公訴時効」の改正には拙速で、早急な改革を要する「取調べの可視化」の問題には慎重という逆の対応を示しています。捜査手続の改革に対する警察・検察の根強い抵抗を抑えるだけの「大英断」を期待できないものでしょうか。何よりも、現に再審・冤罪を切実に訴える事件がなお少なからず存在しているという現状をこそ直視すべきだと思います。

