臓器移植法の改正案
2005年 04月 08日
施行後3年の見直しが予定されていましたので、これまでにも改正をめぐる論議がなされてきましたが、問題の複雑性もあって、なかなかまとまらない状態が続いていたのです。
ところが、最近の報道では、自公両党が検討を進めてきた改正案がまとまり、「脳死を人の死」と定義した上で、本人の同意がなくても遺族の同意があれば臓器の提供を認める内容の改正案を来月にも議員立法として国会に提出することになったとのことです(毎日4月6日)。
現在は、政府与党が意思決定をすれば、法案が難なく国会を通過してしまうという危ない状態にありますので、この改正案も難なく通ってしまうおそれがあります。
しかし、この改正案には、このような形で簡単に処理してしまうにはあまりにも重大な問題が含まれています。世論も、子供のl臓器移植を認める方向に提供要件を緩和することには賛成が多いとしても、「脳死は人の死か」という問題については依然として慎重な意見が多く、臓器移植法の成立時とそれほどの変化は見られないようです。
小児科学界では臓器提供可能年齢の引き下げ提案がなされ、また虐待児が対象になる危険も指摘されているほか、脳死判定が本当に正確に行えるのか、脳死移植の際に麻酔剤が用いられていることの意味を問うなど、基本的な疑問点が解消されているとはとても思えないのです。
少なくとも、これまでの論議を冷静かつ慎重に再検討することの必要性を指摘しておきたいと思います(私自身がこの問題をまとめたのとして、「臓器移植と脳死ー日本法の特色と背景」成文堂2001年、がありますので、参照願います)。

