またまた「匿名」議事録
2010年 03月 20日
結果的には、法務省が用意した「要綱(骨子)」が部分的な修正を経た上で、議会に上程されて成立したのですが、内容的には多くの問題点を含んだ法改正だったのです。そのことは、法制審の刑事法部会での審議内容にも現れており、そこでは新設の危険運転致死傷罪の性格や罪質、刑法上の傷害罪や傷害致死罪、業務上過失致死傷罪、さらには道路交通法上の罪との関係など、原則的で理論的な問題のみならず、実務上の本罪の成立範囲とその限界など、実に多くの問題が、かなり詳しく議論されていることが分かります。
しかし、ここでも残念なことに、議事録には、発言者の氏名が全部秘匿されていて、●になっていますので、「○○委員のさきほどの意見について」といった発言を見ても、○○委員の名がわかりませんので、そのつながりを辿って行くことができず、結局この議事録を何回読んでも論議の筋道を正確に理解することは不可能というほかありません。
これでは、議事録は何のために、誰のために作成し保存されているのかという疑問が出てくるのは当然です。発言者を顕名化すると、プライバシーの問題があり、自由な発言が萎縮し妨げられるといわれるのですが、氏名が公表されれば困るような状況があるとは到底考えられず、むしろ発言者が明示され、議論が正確にフォローされることこそ、国民の知る権利に資するものというべきでしょう。
法制審議会の委員の人選(官僚の排除)を含めて、この点も民主党政権下の「政治主導」による「民主的改革」に期待したいものです。

