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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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法科大学院の見直し

 また「法科大学院」問題が浮上し、法務省と文部科学省の副大臣をトップにした見直しチーム(「法曹養成制度に関する検討ワーキングチーム」)が発足したと報じられています(3月8日朝日)。2004年に開校した法科大学院(ロースクール)の修了者の司法試験合格率が年々下がって、09年には3割を切り、10年頃3千人といった政府目標の達成は絶望的な状況にあります。
 新制度がうまく機能していないことは当局者も認めているのですが、その原因については法務省と文部科学省の間で認識が食い違い、期待された「法科大学院」も乱立したため「淘汰」の動きが顕在化し、「試験偏重からの脱却」という司法制度改革の理念どころか、司法試験合格者数でランキングを競い合わされるという惨めな状態に呻吟しているのが現状です。ロースクールを74校も認可したら、司法試験の合格率が下がり、競争と淘汰という悪循環が生じることは最初から判っていたはずではないかとさえ思われます。
 ところで、上記の検討ワーキングチームも、「政治主導」といいながら、あくまで「論点整理」にとどまり、実際の見直しは夏の参院選後に新たな枠組みで進める意向だといわれています。会合では、関係者のヒアリングをする予定とのことですが、新しく決まった日弁連の新会長は、司法試験合格者数をむしろ「1500人に減らす」という意見なので、今や法曹養成問題は根本的な再検討を迫られているといえるでしょう。
 私見では、この問題も含めて、本当に「政治主導」をいうのなら、これまで制度を設計し運用してきた「官僚」(法務省、文部科学省)の手を離れた「独立の委員会」を立ち上げ、そこがこれまでの関係者から説明と意見を聴取するという方式によって、政策の柱を再構築すべきではないかと思うのです。まずは「法科大学院」が自律性を発揮して、自らの改革構想を大胆に提案すべきであって、文部科学省はこれをまとめる調整役にとどまるべきではないでしょうか。

 
by nakayama_kenichi | 2010-03-13 20:01