検察の証拠隠し
2010年 03月 11日
一方、「布川事件」は、2度目の再審請求によって、ようやく最高裁もかつての有罪判決(無期懲役)の誤りを認めて再審公判が開始されることになったのですが、ここでは検察官は、DNA鑑定のような、これのみで被告人の有罪認定をくつがえす決定的な新証拠はないとして、再審公判でも争う姿勢を崩していません。
しかし、再審開始決定をした東京高裁は、被告人の「代用監獄」における取調べが「並々ならぬ働きかけ(誘導)」によって虚偽の自白を強いたものであり、自白の内容も客観的事実と異なる点が多く信用できないとしていたことに注意しなければなりません。
その上に重要なことは、検察官が被告人に有利な「証拠隠し」をしていたことが明らかになったという点です。「死体検案書」や「被害者の下着」、「近所の女性の供述調書」など、被告人を無罪に導く重要な新証拠の多くが、長年、検察官が「存在しない」として隠していたもので、これらが最初の裁判の際に開示されていたら、そもそも有罪判決を受けることなどなかったといえるでしょう。
裁判員裁判になって、検察官の「証拠開示」が進んだといわれていますが、検察官手持ちの証拠の「全面開示」こそが必要であることを、冤罪事件は示しているのです。

