ロシアの司法改革
2010年 02月 24日
ところが、最近、東大の小森田明夫教授の講演会(2010年2月16日)の記録を入手できましたので、その中から「ロシアの司法改革」の実情についての指摘をいくつか紹介しておきます。
1.現代ロシアの司法改革は、冤罪の表面化をきっかけとする刑事司法の見直しに始まり、権力分立原理の承認(一党制の放棄)という政治的転換と、指令的計画経済から資本主義的市場経済への経済システムへの転換によって、全面的なものとなった。
2.1999年のロシア最高会議が採択した「司法改革の構想」の相当部分が実現され、ロシアの司法制度は、少なくとも制度的には面目を一新しているが、旧来の意識・観念の残存や財政的困難から制度の実際の機能は複雑な様相を呈している。
3.中央集権的な連邦制の下で、大統領の権限は大きく、裁判所の独立には制約があるが、旧法以来の「監督審」や「検事監督」の制度は、欧州人権裁判所の批判によって修正されつつあり、欧州人権裁判所への市民からの申立てがきわめて多い国に属する。
4.刑法典(1996年)には「死刑」が含まれているが、EU加盟(1996年)後、欧州人権条約との関係で「死刑執行のモラトリアム」が続き、遂に連邦最高裁は2010年に、死刑の言い渡しができないものと判断した。
5.刑事訴訟手続では、「予審制度」は残っているものの、被疑者・被告人の弁護人選任権を拡大し、弁護人の取調べ立会い権を認め、取調べは連続4時間を越えてはならず、立会いなく作成された調書の証拠能力を否定するなど、改革が進んでいる。
6.司法改革の鍵とされた「陪審裁判」は選択制であるが、評議は全員一致を目指すべきものとされ、現に無罪率は予想以上に高い(2008年まで通算17%)。
以上から、ロシアおよび旧東欧諸国の「司法改革」の現状をもっと知りたいと感じました。