「法学論叢」の思い出
2010年 02月 17日
この「法学論叢」はすでに古く戦前の大正8年に法学部から経済学部が独立して以来、法学部の教員と院生が執筆する法律学・政治学の専門研究誌として、長い伝統をもつ「月刊誌」で、学界からは高い評価を受けてきたものといわれています。
私自身も、大學院生の時代から執筆の資格を与えられましたので、論文や文献紹介や翻訳などの研究成果を数多く掲載させてもらうことができ、その恩恵を享受した一人です。当時の若い研究者にとっては、まだ「法律時報」や「ジュリスト」などの一般の法律雑誌への掲載は困難な時期でしたので、自分の大学の機関誌である「法学論叢」は一番身近で利用しやすい業績発表の場として貴重な存在だったのです。そして現に、昭和30年には文献紹介と判例批評、昭和31年には論文2本と文献紹介、昭和31年には論文と判例批評を執筆した記録があります。
その後も、「法学論叢」への執筆は継続し、退職するまで少なくとも1年に1件は執筆を続けていたように思います。そして、この点については、かつて佐伯千仭先生のご自宅を訪問した際のお話しの中に、戦前の法学部教授は「法学論叢」に少なくとも年1回は執筆するという暗黙の申し合わせがあったといわれ、私自身も戦前の古い法学論叢を調べて確認し、きびしい世界だなと感じ入ったことがあります。
ところが、最近送られてくる「法学論叢」を見ますと、月刊誌として続いてはいるものの、現役教授の論文がきわめて少なく、「院生論集」のような印象を受けるのは、いささか淋しい感じがします。天下の京大法学部の「法学論叢」がんばれといいたいところです。