予備校受講生の来訪
2010年 02月 09日
私は初対面のつもりでしたが、Y氏の方は私をよく知っていて、その証拠品として、昭和54年〈1979年〉8月に東京の司法試験予備校である「辰巳法律研究所」で私が行った刑法の集中講義のレジメを取り出したのです。たしかにそれは私が作成した講義案で、Y氏がそれに書き込みをした跡も見られました。そして、書かれた講義案だけでなく、講義を録音したテープを今でも大切に保存しているといわれて、驚きました。
たしかに、その頃は私も50歳代で元気があり、本務校の講義やゼミだけでなく、関西周辺の複数の私立大学に非常勤講師として出向し、さらに夏休みなどには上京して「辰巳法律研究所」や「中央大学真法会」などで、答案練習会や集中講義をしていました。Y氏は、そのときの熱心な受講生の一人であったわけです。とくに私の講義には興味があったとして、いまだに憶えてくれており、実に30年振りに私宅まで訪問してくれたことは、本当に嬉しいことで、教師冥利につきるといってもよいでしょう。
Y氏は、青山学院大学の法学部を昭和54年(1979年)に卒業後、司法試験を目指して勉強し始め、なかなか択一試験の壁を破れませんでしたが、予備校でアルバイトをしながら、ようやく平成5年(1993年)に念願の司法試験に合格し、沖縄で司法修習の後、平成8年(1996年)に弁護士登録をし、以後東京で弁護士として多方面に活躍しておられます。いま53歳ということですので、私が集中講義に行った頃のように、一番元気のある時期にあたるわけです。雄弁で有能な弁護士だと感じました。
今のロースクールよりも、昔の司法試験の方が良かったというY氏の意見にも一理あると感じながら、私もY氏の人生に少し手助けできたことを嬉しく思いました。