時効の廃止・延長問題
2010年 02月 07日
ところが、一方で、「公訴時効」(犯罪発生後一定の時日の経過によって公訴の提起ができなくなる制度)については、すでに平成16年に時効期間の延長がなされたばかりなのに、急にこの問題が浮上し、法務大臣の諮問をうけた法制審議会が2009年11月から2010年2月までという短期間に答申を出し、法案を今国会に上程することが予定されています。
しかも、法制審議会が審議の対象にした改正案の内容は、法務省があらかじめ用意した「たたき台」に沿ったもので、そこには公訴時効期間のさらなる延長のほか、一定の重大犯罪については公訴時効自体を廃止してしまう案も含まれており、さらに今回の改正が現に時効が進行中の事件にも遡及的に適用することまで考慮されています。それは、時効制度の趣旨にまでさかのぼる重大な見直しで、社会的な影響も大きい問題であります。
ところが、法制審議会の議事録は、依然として発言者が「匿名」になっていますので議事の経緯を正確に確認することが出来ず、弁護士会推薦委員のほかはおおむね法務省案に傾くという学者委員の「人選」方法は、これまでと一向に変わらず、とくにこの問題では、「犯人がのうのうと生き延びることが許せない」という犯罪被害者側の「感情論」に圧倒されてしまっているという印象を否定できません。
専門の刑事法学者の意見も総括されず、民主党案(特に悪質な事案について検察官の請求により裁判所が中断を認める)さえ棚上げされている現状に対して、民主党と法務大臣の毅然たる対応を期待し、少なくとも「慎重審議」を求めたいと思います。