小野博士の「日本法理」の完読
2009年 12月 20日
これは、さきに公表しました「佐伯博士の刑法思想と『日本法理』」(上・中・下、判例時報2013,2015,2017号、2008年)との関連で、小野博士による「本命」の「日本法理」の真意とその意義を再度確認するのが目的でした。原本が手元になく、絶版になっていますので、立命館大学の上田さんに依頼して図書館から借り出してもらいましたので、早く返却しなければと思いながらの仕事でした。
最初は比較的早く進んだのですが、後半に入り、終りが近づくにつれて、次第に筆が重くなり、中断を重ねながらようやく何とか年内に終わったというのが率直な思いです。予定より遅くなった主たる理由は、西洋法理と東洋法理の比較検討という問題には興味を惹かれたのですが、この「日本法理」が昭和10年以降の日本帝国主義の政治的・軍事的な対外膨張と侵略政策を正当化し、美化するための思想的な根拠として援用されるようになり、それが「大東亜法秩序の日本法理的構想」として見事に完結して行く姿を見て、学問が時々の時代思潮の流れにいかに無力であるかを繰り返し思い知らされたからだといってよいでしょう。
この仕事は、まだ完結しておらず、小野博士が「日本法理」に傾かれるようになった本書以前の業績、および戦後「日本法理」がどのように克服ないし清算されていったのかという本書以後の業績を検討し、「日本法理」思想の全体像を確認したいと考えています。
佐伯博士の「日本法理」思想との比較も予定していますので、自分が書いた原稿も再読するという、行きつ戻りつの作業になりそうで、これらは来年の課題になります。