業務上過失致死傷罪と危険運転致傷罪
2009年 12月 13日
その中には、「アルコール・薬物運転型」と「信号無視型」と「通行妨害型」の3つがありますが、とくに最近、「妨害型」の危険運転致死傷罪に関する同様な2つの事件が現在最高裁に係属中であることが分り、その帰趨に注目すべきことを指摘しておきます。
大阪のケースでは、自動車がバイクと並進中に幅寄せをしたこと、そして東京のケースでは自動車がバイクの直前に進入後に狭い間隔で並進したことを危険な妨害行為とした上で、いずれも妨害行為の故意と妨害目的が「推認」されると、1.2審では認めました。
しかしそこには、大きな落とし穴があるように思われてなりません。それは、いずれのケースも「妨害行為」の態様と車両の位置関係が不明確で、目撃者の後方からの目撃供述の信用性にも問題があるだけでなく、妨害行為の「故意」と「妨害の目的」が積極的に立証されず、結果と行為態様から「推認」されるという認定にとどまっているからです。
もしこれが、「業務上過失致死傷罪」ならば、過失行為の存在と業務上過失の存否が、より具体的な状況証拠によって慎重に立証されるべきことは当然であり、判例の蓄積も多いのですが、これがいったん「危険運転致死傷罪」で起訴されると、法が定めた危険行為の「類型」に当てはまれば結果との「因果関係」があるとされ、さらに「故意」と「目的」もほとんど「推認」されてしまうというパターンに至るおそれが現に出てきているのです。
これでは、悪質な「危険運転行為」の類型を個別的に定め、「故意犯」として「積極的な目的」がある場合に限定した「立法趣旨」に反し、かえって処罰範囲が拡大する危惧があるといわざるを得ません。詳しくは、「論文」を書いて論証することにします。