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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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韓国の死刑廃止への道

 最近の出版物(『死刑100年と裁判員制度―年報・死刑廃止2009』インパクト出版会、2009年)の中に、「韓国における死刑廃止国への道程」(朴秉植教授)と題する論稿が目にとまりましたので、その中から注目すべき記述のいくつかを紹介しておきます。
  1.死刑の執行停止から10年 韓国では、金泳三政権の下で1997年12月に23人の死刑大量執行が行われたが、それ以後、金大中政権と廬武鉉政権では1人の執行もなく、2007年12月には、韓国は事実上の「死刑廃止国」となった。その後も執行はない。
  2.世論調査の動向 一般の世論は今でも死刑存置論(約64%)の方が廃止論(約13%)よりもはるかに多いが、マスコミ関係者と裁判官、弁護士、国会議員は廃止論の方が多く(50-60%)、刑事法専門の法学部教授はほとんどが廃止論者である。
  3.死刑の犯罪抑止効果 1997年に23人もの大量執行の直後でも殺人事件はかえって増加し、1977年から1997年の20年間に殺人件数は56%も増加しているので、死刑にはむしろ「犯罪促進効果」「残忍化効果」が見られる。
  4.死刑とタリオの法則 存置論の理論的な論拠はほぼ崩れたが、人を殺した者には死刑をというタリオ(同害報復)の感情が残っている。しかし「誤判」で死刑にした者も同じく人を殺したことになるという矛盾がある。
  5.被害者の感情と死刑存置論 被害者の問題を解決しない限り死刑廃止は達成できないが、死刑廃止運動が犯罪被害者の支援や救助活動に取り組み、被害者との話し合い「癒しと和解」の場を設定した結果、被害者支援は、死刑問題とは別個に、真剣に取り組むべき課題として位置づけることが可能となった。
  6.宗教家の役割 韓国の死刑廃止運動には、カトリック司教会議を中心とした宗教者が大きな役割を果たし、先頭にたって引っ張ってきたという歴史がある。
  以上のような指摘は、日本と比較して、真剣に学び、検討すべき点が多いことを痛感させるものがあります。個々の問題点については、また触れるつもりです。
by nakayama_kenichi | 2009-10-22 16:02