韓国の死刑廃止への道
2009年 10月 22日
1.死刑の執行停止から10年 韓国では、金泳三政権の下で1997年12月に23人の死刑大量執行が行われたが、それ以後、金大中政権と廬武鉉政権では1人の執行もなく、2007年12月には、韓国は事実上の「死刑廃止国」となった。その後も執行はない。
2.世論調査の動向 一般の世論は今でも死刑存置論(約64%)の方が廃止論(約13%)よりもはるかに多いが、マスコミ関係者と裁判官、弁護士、国会議員は廃止論の方が多く(50-60%)、刑事法専門の法学部教授はほとんどが廃止論者である。
3.死刑の犯罪抑止効果 1997年に23人もの大量執行の直後でも殺人事件はかえって増加し、1977年から1997年の20年間に殺人件数は56%も増加しているので、死刑にはむしろ「犯罪促進効果」「残忍化効果」が見られる。
4.死刑とタリオの法則 存置論の理論的な論拠はほぼ崩れたが、人を殺した者には死刑をというタリオ(同害報復)の感情が残っている。しかし「誤判」で死刑にした者も同じく人を殺したことになるという矛盾がある。
5.被害者の感情と死刑存置論 被害者の問題を解決しない限り死刑廃止は達成できないが、死刑廃止運動が犯罪被害者の支援や救助活動に取り組み、被害者との話し合い「癒しと和解」の場を設定した結果、被害者支援は、死刑問題とは別個に、真剣に取り組むべき課題として位置づけることが可能となった。
6.宗教家の役割 韓国の死刑廃止運動には、カトリック司教会議を中心とした宗教者が大きな役割を果たし、先頭にたって引っ張ってきたという歴史がある。
以上のような指摘は、日本と比較して、真剣に学び、検討すべき点が多いことを痛感させるものがあります。個々の問題点については、また触れるつもりです。

