民主党のマニフェスト(法務関係)(4)(完)
2009年 10月 08日
これは、現在の刑罰制度の見直しに関する問題で、無期刑と死刑との中間に「終身刑」を作るという問題とともに、「死刑」制度の問題も含まれていますので、重要な意味をもっています。マニフェストには、以下のような指摘があります。
「死刑存廃の国民的議論を行うとともに、終身刑を検討し、仮釈放制度の客観化・透明化をはかります。死刑制度については、死刑存置国が先進国中では日本と米国のみであり、EUの加盟条件に死刑廃止があがっているなどの国際的な動向にも注視しながら死刑の存廃問題だけでなく当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などを含めて国会内外で幅広く議論を継続していきます。公訴時効のあり方については、法定刑に死刑が含まれる重要事案のうち特に犯情悪質な事案について、検察官の請求によって裁判所が公訴時効の中断を認める制度を検討します」。
この項目については、文章も短く、方針や方向にもいまだ具体性のない「検討」段階にあるものが指摘されただけにとどまっていますが、それは「死刑」の廃止や「公訴時効」の延長・廃止など、議論の分かれる深刻な問題が主題になっているからだと考えられます。
しかし、これらの問題は、何よりも現実に進行している「厳罰主義」〈重罰化)の方向自体に対する根本的な批判的検討を前提としなければ一歩も進まず、かえって事態を悪化させるおそれがあります。たとえば、「終身刑の新設」は、死刑を減少させるよりも、無期刑を終身刑化することになるでしょう。「厳罰主義」は刑務所人口を増やすだけで犯罪防止効果がないことを認めた上で、一見困難には見えますが、死刑の廃止を展望できるような方向に現状を一歩一歩改善して行くための具体策の展開と賢明な「決断」を期待したいものです。

