陪審制の長所(2)
2009年 09月 28日
「陪審制度では、裁判事務を判事と陪審が分担し、陪審員は犯罪事実を独自に判定する専権をもち、判事は関与しないところに長所があるのだから、判事と参審員が一緒に評議しては陪審の長所が半減されてしまう。従って、参審よりは陪審の方が優れる」。
「陪審裁判所においては裁判事務を判事及び陪審員の両者に分担させ、陪審員は犯罪事実があるか否かを判定する専権をもつ。判事は刑の量定につき専権を有するが、参審裁判所においては判事とは裁判事務について全然同等の権利をもち、犯罪事実の認定及び刑の量定に関し、合議して判定する。しかし陪審制度の長所は、多くは事実認定に関する陪審員の長所にある。従ってその長所を十分に発揮させるには、陪審裁判所のように陪審員のみに罪責問題の解決に当たらせ、判事を干与(かんよ)させないのが適当とする議論も、一理ありといわざるをえない。参審裁判所のように、判事及び陪審員を合体して罪責問題の解決に当たらせては、陪審員の特色たる長所を半減させてしまう結果を生じる」。
また、日本の旧刑法(明治15年)の草案起草者ボアソナードの意見も引用されています。
「刑事判決は最大の精神的権威をもつべきだから、人民自身にその判定を委ねれば、判定に対する人民の尊重信頼がいっそう深くなること、この事実である。被告人の利益は自分と同等な人民の中から抜擢した者に委任し、民衆の利益は民衆中の人に委任することである」。
そして、現にこの日本で、大正12年(1923年)から昭和18年(1943年)までの20年間、実際に「陪審法」が実施されていたという歴史的事実が、意識的に無視され、その長所が忘れ去られようとしていることに警鐘を鳴らす必要があります。

