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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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陪審制の長所(1)

 最近、『裁判員必携』(石松竹雄=伊佐千尋共著、2009年8月、筑摩新書)を送って頂き、読む機会がありました。元裁判官とジャーナリストが情熱をこめて裁判員になる可能性のある市民に訴えようとしたものですが、そこには、これまでの官僚裁判に対するきびしい反省と批判から新しい裁判員制度(参審制)を真に国民的なものにするためには、どうしても「陪審制」の復活をこそ目標にすべきであるという確信が語られています。
 本書の中には、陪審制の長所として、かつて大正3年(1914年)に、大審院(最高裁)判事だった大場茂馬博士が書かれたといわれる以下の12項目が引用されています。
    ① 官憲を笠にきた司法権濫用の弊害を避け、濫用に対する不信用を避けること。
    ② 民衆と法律との隔離を避け、市民が裁判所を信頼するようになること。
    ③ 刑の言い渡しは公正かつ必要な理由を周知させる。
    ④ 立憲制度の趣旨を貫徹し、妥当な裁判を期待させる。
    ⑤ 一般民衆を支配する法律的常識を利用し、民衆の満足する裁判を期待させる。
    ⑥ 裁判手続を丁重にし、判決の信用を増大させる。
    ⑦ 直接審理主義及び自由採証主義を貫徹する。
    ⑧ 判事の経験を主とすることから生じる誤判を救済する。
    ⑨ 常識に遠ざかり迂闊な事実を避け、事実の真相に合致する裁判を期待させる。
    ⑩ 有罪の予断を避け、公平な裁判を期待させる。
    ⑪ 厳刑酷罰の濫用を避ける。
    ⑫ 被告人が甘受せざるをえない裁判を期待させる。
 以上の中では、とくに①、⑤、⑦、⑧、⑩、⑪などの指摘が重要だと思われます。
 
by nakayama_kenichi | 2009-09-25 11:39