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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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手書きからワープロを経てパソコンへ


 私どもの世代が研究者になったときは、原稿は全部「手書き」でした。私自身も、最初の論文は、コクヨの400字つめ原稿用紙に鉛筆で下書きし、ペンとインクで清書した記憶があります。しかし、手書きの原稿は、印刷されれば散逸してしまい、自筆で書いたものはほとんど残っていません。ただし、おそらく手書き原稿の最後になったと思われるもので、今でも残っているのは、「刑法総論」(1982年)と「刑法各論」(1984年)の2冊の原稿であり、これらは手書きの原稿の校正段階のものを成文堂の好意で装丁つきの6冊分にまとめてもらった大部なもので(おそらく6000枚程度)、今でも大切に保存しています。
 その後、ワープロの時代に移るのですが、私は不器用なくせに、たまたま入った印税をはたいて、たしか当時はまだ80万円もする大きな機械を購入しました。最初は、原稿用紙でなく機械に向かって考えることの不自然さに当惑していましたが、やがて慣れて、それ以後は軽い小型のワープロを実に長い間愛用して、失敗を経験しながらも、多くの原稿を量産しました。
 ところが、若手の上田寛教授から、パソコンを勧められ、最初は抵抗していたのですが、試みに小型のものを購入しました。しかし、最初はもっぱらメール用に限定し、原稿は依然として慣れたワープロで書いていました。しかしそのうち、書いた原稿がそのまま送信できろというメリットに誘惑され、つい最近になって、とうとうパソコンを用いて直接に原稿を書くという第3段階に入ることになったのです。
 そして、今度は川口教授に誘われて、このexblogを始めたのですが、もうワープロを使わず、パソコンを使って原稿を書くという体制に基本的に移行したようです。
 しかし、同時に私どもの世代は、決してかつての手書き時代の素朴な創造の喜びと原稿用紙にしみこんだ手垢にまみれた苦労を忘れてはおりません。そして、今でも私自身は、せめて年賀状だけは、印刷にすることなく、はがきの裏も表も、肉筆で自筆することだけは絶対に継続するという覚悟を決めています。自筆で字を書くとうのは、やはり人間本来の楽しい営みではないでしょうか。
by nakayama_kenichi | 2005-03-23 10:12