日本法理の自覚的展開
2009年 08月 27日
私は、刑法の研究を始めたころから、刑法思想の歴史に興味がありましたので、われわれの先生にあたる瀧川、小野、牧野、木村、佐伯、団藤などの刑法学の大家の著書を読み、現にこれらの諸大家の刑法思想を比較検討した著書も公刊しています(『刑法の基本思想』成文堂、初版1979年、増補版2003年)。
そして、戦前から戦後への刑法思想の変遷に関しては、とくに戦後にリベラルな刑法思想を展開された佐伯博士が、戦前の末期には、いわゆる「日本法理」(刑法における日本的伝統の探求)に深く傾倒されていたという事実とその理由を明らかにするために、かなり長い論文を書いたことがあります(「佐伯博士の刑法思想と日本法理」上・中・下、判例時報2013,2015,2017号、2008年)。
そしてその際、小野博士の「日本法理の自覚的展開」との関係を検討したいと思いながら、果さないままになっていました。この本を手元において、直接かつ丹念に読んで検討する機会がなかったのですが、今回ようやくその実行に着手することになりました。小野博士にずっと前にお会いしたときの緊張感を思い出しながら、できるだけ内在的に、丁寧に内容を紹介することによって、「戦前」をいかに評価すべきかという、いまだ十分に果されていない重要な課題に取り組んでみたいと考えています。
因みに、当時の佐伯博士は、この本を高く評価し、基本的に共鳴し得るものであると評価されていたことも参考にされてよいでしょう。

