終末期医療のルール化
2009年 08月 23日
最近、この「終末期医療のルール化」に関する文献を読む機会がありました(日本医事法学会編・年報「医事法学」24、2009年)。私自身も、かつて、安楽死や尊厳死に関する著書を書いたことがありますが(『安楽死と尊厳死』成文堂2000年)、その後の展開状況に注目しました。
この問題について、一番大きな変化は、とくに救急医療を中心とした臨床医の現場の要望に答えるために、厚生労働省が検討会を立ち上げ、2006年に出た叩き台をもとに、2007年5月には「終末期医療の決定のプロセスに関するガイドライン」を公表したことです。そして、これに呼応するように、2007年9月には日本救急医学会が「救急医療における終末期医療に関するガイドライン」を公表し、さらに2008年2月には日本医師会第X次生命倫理懇談会が「終末期医療に関するガイドラインについて」を相次いで公表しています。
そこには、この終末期医療の問題を、固い法律ではなく、より柔軟な「ガイドライン」の形で解決しようという姿勢がうかがわれますが、それ自体は妥当だとしましても、各ガイドラン間の相互関係はいまだ明らかとはいえない段階にあります。一方では、これをより具体化して行く必要がありますが、しかし他方では、具体化し過ぎると、それが法律上も許されるという誤解が生じ、検察との摩擦が生じるというジレンマがあります。
問題の根本には、わが国の社会に「医療不信」が依然として根深いこと、日本医師会の自治・自律機能がきわめて低く、医療倫理が末端まで浸透しにくいことなどの事情があり、これらの基本的な問題から目を離すべきではないことを強調しておきたいと思います。