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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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裁判員法第1号事件

 新しい裁判員法の実施第1号事件の審理が、8月3日から8月6日までの4日間の連続開廷で早期に終結しました。テレビや新聞は、その経過と内容を連日にわたって詳しく報道しましたが、それは、裁判員の選出手続から始まって、第1回公判からの審理の進行状況、そして最終的には、判決の内容を伝えるとともに、裁判員の感想や、担当した検察官や弁護士、さらにはいわゆる有識者の談話にも及んでいます。そして、一般には、まずは無難な門出(好発進)として評価されているといってよいでしょう。
 この第1号事件は、いわゆる「否認事件」ではないので、最初から有罪が予測されており、「量刑」(どの程度の刑罰を科すのか)に関する裁判員の対応が問われるというケースでしたから、それほど問題があるとは思われなかったのですが、しかし細かく見ますと、このような単純と思われる事件の審理においても、すでにいくつかの問題があり、今後の課題をかかえていることに留意しなければなりません。
  第1は、裁判員が加わった量刑の結論が、専門家が予想したよりも重かったという事実です。いろいろな事情の中でも、私見では、被害者側の求刑が重かったという点に影響されたもので、今後の厳刑化の傾向に警戒が必要だと思います。
  第2は、裁判員の発言や質問が実は裁判官の示唆によるものではないかという憶測を呼んだ点です。これは、ある程度予測されたところですが、裁判員が裁判官に積極的に質問するという場面をこそ期待したいところです。
  第3は、本件でも、裁判官による刑事裁判の原則(疑わしきは被告人の利益になど)に関する「説示」がいつ、どこで行われたのかはっきりしないという点です。この説示こそ、裁判員裁判に必須のものであることが、どこにも触れられていないのが残念です。
by nakayama_kenichi | 2009-08-07 11:00