裁判員法第1号事件
2009年 08月 07日
この第1号事件は、いわゆる「否認事件」ではないので、最初から有罪が予測されており、「量刑」(どの程度の刑罰を科すのか)に関する裁判員の対応が問われるというケースでしたから、それほど問題があるとは思われなかったのですが、しかし細かく見ますと、このような単純と思われる事件の審理においても、すでにいくつかの問題があり、今後の課題をかかえていることに留意しなければなりません。
第1は、裁判員が加わった量刑の結論が、専門家が予想したよりも重かったという事実です。いろいろな事情の中でも、私見では、被害者側の求刑が重かったという点に影響されたもので、今後の厳刑化の傾向に警戒が必要だと思います。
第2は、裁判員の発言や質問が実は裁判官の示唆によるものではないかという憶測を呼んだ点です。これは、ある程度予測されたところですが、裁判員が裁判官に積極的に質問するという場面をこそ期待したいところです。
第3は、本件でも、裁判官による刑事裁判の原則(疑わしきは被告人の利益になど)に関する「説示」がいつ、どこで行われたのかはっきりしないという点です。この説示こそ、裁判員裁判に必須のものであることが、どこにも触れられていないのが残念です。