臓器移植法の改正
2009年 06月 20日
第1は、どの新聞も、A案が「脳死は死」とし、死の概念の転換を前提としたものであると評価している点ですが、「改正案」には、そのような表現は一切使われていません。あくまでも臓器移植の場面に限る趣旨であることを、しかも衆議院での法案審議中に、法案提出者が繰り返していたという事実に注目すべきです(朝日の社説は「骨格が揺らいだ」としています)。
第2は、どの新聞も、改正案の「全文」を掲載していませんが、その内容は、一読して意味が判るような内容とはほど遠く、とても理解し難いような「悪文」の典型です。「死体(脳死した者の身体)を含む」という表現はそのままで、「脳死体」という表現はありません。
第3は、脳死した者の身体が、本人の同意がなくても(不明であっても)、遺族が承諾したときは、死体からの臓器移植の対象になるとした点で、これが最大の改正点なのですが、なぜ遺族が承諾しただけで十分なのかという理論的根拠が何ら示されていません。「脳死は死」が前提だというのであれば、他の医療現場にも波及し、混乱を招くことは必定です。
第4は、本法の「見直し」条項といわれるもの(附則2条)が規定された経緯に関する論点で、「検討等」とされた意味に関する当時の議事録の再検討が必要だろうと思います。
ともあれ、かつての臓器移植法案の立法時と同様に(参議院で修正された)、参議院での特別に「慎重な審議」を期待したいものです。