足利事件の教訓
2009年 06月 06日
まず、この明白な「冤罪」を作り出したのが国家権力であり、その責任が警察・検察の捜査機関だけでなく、裁判所、しかも最高裁判所にまで及んでいるという事実を忘れてはなりません。誤判の原因がDNA鑑定の技術の進歩の差にあったという形で矮小化してしまうのは、表面的な言い逃れに過ぎず、真っ先になすべきは、この冤罪事件に関わった国家機関が公式に反省・謝罪し、責任者を処分した上で、以後このような人権侵害を繰り返さないための「制度的な保障」を確立することでなければなりません。
この事件では、DNA鑑定が有罪の証拠とされただけでなく、嘘の「自白」を引き出すために利用されたという事実に注目すべきです。誰もが不思議に思うのは、無期懲役にも当たるような重大な犯罪について、真犯人でない者がなぜ嘘の「自白」したのかという点です。菅谷さんは、DNA鑑定を突きつけられて自白を迫られ、暴行も受けたとして、当時の警察・検察官を絶対に許さないと語っています。今こそ、「代用監獄」における密室の長期間にわたる取調べそのものを廃止する決断が必要なのです。
ところが実際には、この期に及んでも、警察は取調べ状況の録画の拡大を検討するというだけで、「全面(可視化)」というわけではないと断っています。「自白は証拠の王」として重視されてきた伝統が、裁判員制度にも及ぶという危惧は、決して杞憂ではなく、この機会にこそ、捜査機関による取調べの「全面可視化」を実現しなければなりません。


