裁判員法の施行
2009年 05月 21日
しかし、5年間も準備期間があり、法務省や最高裁が懸命に旗を振って宣伝と普及に努力したにもかかわらず、裁判員として参加することになっている一般市民の関心はきわめて低く、当局者もどうなるのかやって見なければわからないといいつつ、ともかくも施行されるというきわめて異例な出発となりました。
その最大の原因は、法務省も最高裁も、現在の「裁判官裁判」とそれを支える検察と警察の捜査活動を基本的に妥当なものであると評価した上で、これに市民が参加することで刑事司法に対する国民の信頼が得られるというのみで、現状への自己批判が全く見られないところにあります。最高裁は最初から「陪審制」には批判的であり、法務省も「代用監獄」における密室取調べを改革する意思を全く持ち合わせていないのが現実です。したがって、新しい裁判員法が「冤罪の防止」を目的とするとはいっさい公言されていないことを見抜く必要があります。
その証拠に、裁判員法に対する批判(裁判員の守秘義務、取調べ全過程の録画、公判前手続の公開など)には一切耳をかさず、むしろ法相は死刑制度によって社会の秩序が保たれていると公言し、裁判員による死刑判決の悩みにも理解を示そうとしないのです。
新聞も、リベラルな「韓国の国民参与法」に触れてはいますが、これに倣えと直言する姿勢は見られず、部分的な問題を指摘して次の改革を要望するにとどまっています(朝日5日21日社説)。まして、「お上任せ」の裁判から脱却などというのは論外でしょう(毎日5月21日社説)。