裁判員制度と死刑
2009年 05月 12日
しかし、世界の国際的動向としては、実際に死刑を存置する国々の中でも、死刑の執行について次第に抑制的になっていると分析しています。中国が世界で最も多い死刑執行国であり、しかも死刑執行に関する情報も秘匿されているのは、論外ですが、何事においても日本が倣おうとしているアメリカでは、明らかに死刑の適用が抑制的になっているだけでなく、死刑の廃止に向けた具体的な動きが進んでおり、現在8州で死刑を今後やめていく、停止していく、廃止していくという動きがあることが報じられていることに注目すべきでしょう。
日本では、最近の世論調査でも、8割以上の人が死刑制度の維持を望んでいるという状況の中で、死刑の判決が増え、死刑の執行もまた増えると傾向が一向に止まりません。裁判官も、今では、死刑判決に抵抗を感じなくなっているようです。
しかし、裁判員制度が始まりますと、死刑を求刑された事件で、裁判員が「被告人の命を絶つべきか」の判断に迫られます。それが、日本における今後の死刑問題の帰趨にどんな影響を与えるのかが注目されるところです。かつて最高裁判事だった団藤重光博士が、死刑言い渡しの際に「人殺し」という声を聞いたことが死刑廃止論者になった一つの契機であったといわれていたことが想起されます。

