35年目の証言
2009年 05月 09日
今回、署名入りで送ってもらった『長沼事件 平賀書簡―35年目の証言』(福島=大出=水島共編著、日本評論社、2009年)を一気に読了しましたが、そこには、北海道長沼ナイキ基地訴訟における違憲判決の経過とともに、この違憲判決を回避させるために当時の札幌地裁の平賀健太所長が福島裁判官に送った「平賀書簡」が裁判官の独立に対する干渉ではないかという問題が、最高裁や国会まで巻き込む政治問題にまで拡大し、結果的には「青法協」(青年法律家協会)に所属する若手の裁判官が再任拒否などの不利益を受け、裁判官に対する官僚統制が進むという「司法の危機」をもたらした経緯がなまなましく語られています。
福島氏は、自衛隊の違憲判決については、当然のことをしただけだとし、憲法判断を避け続ける最高裁判所に毅然とした姿勢を求め続けていますが、結果的に青法協所属の若い裁判官の進路を阻害するような多大の迷惑をかけたことには心が痛むと述懐されています。
改めて、福島氏の国民に対する正直さと誠実さ、そして憲法の基本理念への深い理解と信頼のゆるぎない確信を再確認し、その大変なご苦労に深甚の敬意を表したいと思います。