虚偽の自白とDNA
2009年 04月 27日
ところが、アメリカでは、事態はさらに進んでいて、自白して有罪となった事例のうち、1990年代以降、DNA鑑定によって虚偽の自白であったことが判明したケースが、実に125例にも上ることが明らかにされています(スティーブン・A・ドリズィン=リチャード・A・レオ『なぜ無実の人が自白するのか―DNA鑑定は告発する』伊藤和子訳、日本評論社2008年)。
本書によりますと、「ミランダ・ルール」(被疑者に対して、黙秘権、弁護人立会権などを告知すること)が確立しているはずのアメリカでも、捜査官に誘導されてこれらの権利を放棄し虚偽の自白をするケースが多く、そのことが客観的な証拠であるDNAによって明らかになったという実例がなまなましく紹介されていて、驚かされます。
「ミランダ・ルール」さえない日本では、状況はより深刻で、強制よりもむしろ心理的に誘導された自白が有罪判決に導くという可能性がさらに高いと考えられます。裁判員も自白があれば有罪にしやすいので、自白を得るための取調べが熱心に続くでしょう。
日本でも、DNA鑑定による誤判の防止という課題を追及する必要があります。