文楽鑑賞漬けの一日
2009年 04月 10日
いつものように、今回も勧誘して下さった大阪の石川弁護士は、古くからの大の文楽ファンで、出し物の内容も語り手などのスタフの経歴などにも詳しい常連なのですが、私などは全くの素人で、何も詳しいことが判らないままに、ただ繊細な人形のしぐさに惹かれて、話の成り行きを追い、義理人情の世界に引き込まれるといった程度のものです。それでも、日本の古典的な芸能の魅力が少しづつわかるようになってきたようです。
今回のテーマは、通し狂言「義経千本桜」という有名な出し物で、平家追討の大功を立てながら、兄頼朝に追われる源義経の流転の過程に、源平の合戦で討ち死にしたはずの平家の武将たち(平知盛、維盛、教経)の後日譚が絡むという物語になっています。
源氏物語も平家物語も、もうほとんど忘れていますので、なかなか話の筋がわかり難いのですが、「討っては討たれ討たれて討つ源平の習い」という連鎖と宿命の中で、主君と家臣、夫と妻子との間の悲劇的な人間関係が見事に演じられて行きます。
魅力は何といっても美しい人形がまるで生きているように操られていること、その動作に合わせる語り手の名調子によって、とくに人間国宝の人形使いと語り手の息の合った正確で微妙な動きが、観客の心を捉えて離さないというところにあります。
今回はとくに、静御前の人形のあでやかな姿としなやかな動きが印象的でした。