Lesser evil の世界
2009年 03月 28日
そこでは、「戦争責任と戦後責任」や「在日韓国・朝鮮人問題」などが語られていますが、しかしそれらの問題を一面的に見ることは誤りで、たとえば第2次大戦で日本軍が一千万人以上のアジアの民を殺したという事実は決して消えないけれども、しかし戦後の日本が誤った過去を反省して平和主義を守り、世界有数の経済的繁栄と安全で信頼性の高い社会と文化を作り出し、貧しい途上国に大規模な援助と協力を行ってきたということは十分に誇ってよい事実であるといわれています(ただし、過去の反省と平和主義が揺らぎつつありますが)。
これまで、人類は過ちから学び、絶えず揺り戻しを経験しながら、長期的には少しでもましな世界へと向かっていると信じて、小さな実践を積み重ねることが大切であり、その際には、変化がひとりでやってくるものではなく、現実を変えるのは、その現実をおかしいと感じ、それを冷静に分析し、それに基づいて実践する一人一人の取り組みであるといわれるのです。
そして最後に、民主主義という「多数の専制」が働きやすい現代社会では、「最大多数の最大幸福」よりも、「少数者への最小抑圧」という価値理念こそが保持されるべきではないかと結ばれています。それは、法が現実を正当化する側面をもつことへの警鐘といってよいでしょう。

