心神喪失者等医療観察法の性格
2009年 03月 18日
ある精神医療系の雑誌が、本法の見直しに関する「特集」を企画し、私にも依頼がありました。「医療観察法の制定過程と性格論争」というテーマでしたので、本法の制定当時の文献を集めて再検討するという作業に追われました。おかげでかつての制定当時の法案をめぐる論争を改めてフォローし直すことができて、よい勉強になりました。「臨床精神医学」38巻5月号(2009年5月)に収録されることになっています。
最大の論点は、国会審議の段階で、「政府案」にあった「再犯のおそれ」の要件が削除されて、「修正案」がこれを「医療の必要性」に変更したという点でした。しかし、「同様の行為を行うことなく」という文言が入ったために、本法が「保安法」から「医療法」に変化したのかどうか、なお微妙な問題が残っていたのです。
しかし、本法施行後の実際の運用は、とくに付添い人の弁護士の献身的な努力もあって、種々の問題を抱えながらも、基本的に「医療法」として運用されているといえるでしょう。しかし、そのためにも最大の問題は、わが国の精神医療一般の人的・物的な貧困状態をいかに改善すべきかという点にあることを繰り返し強調しておく必要があります。

