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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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心神喪失者等医療観察法の性格

 この難しい名の法律は、2005年に施行されたもので、附則で5年後の見直しを定めていましたが、もうその時期が近づいてきています。この法律は、心神喪失(是非を弁別する能力のない)などの状態にある精神障害者が殺人、放火等の重大な他害行為を行った場合に、検察官の申立てによって、裁判所が裁判官と精神科医の合議で、「指定医療機関」への入院や通院を命じることを規定したものですが、その成立当時から賛否両論がはげしく争われたものです。
 ある精神医療系の雑誌が、本法の見直しに関する「特集」を企画し、私にも依頼がありました。「医療観察法の制定過程と性格論争」というテーマでしたので、本法の制定当時の文献を集めて再検討するという作業に追われました。おかげでかつての制定当時の法案をめぐる論争を改めてフォローし直すことができて、よい勉強になりました。「臨床精神医学」38巻5月号(2009年5月)に収録されることになっています。
最大の論点は、国会審議の段階で、「政府案」にあった「再犯のおそれ」の要件が削除されて、「修正案」がこれを「医療の必要性」に変更したという点でした。しかし、「同様の行為を行うことなく」という文言が入ったために、本法が「保安法」から「医療法」に変化したのかどうか、なお微妙な問題が残っていたのです。
しかし、本法施行後の実際の運用は、とくに付添い人の弁護士の献身的な努力もあって、種々の問題を抱えながらも、基本的に「医療法」として運用されているといえるでしょう。しかし、そのためにも最大の問題は、わが国の精神医療一般の人的・物的な貧困状態をいかに改善すべきかという点にあることを繰り返し強調しておく必要があります。
by nakayama_kenichi | 2009-03-18 22:21