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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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『世界』4月号

 雑誌「世界」の2009年4月号が出来て、岩波書店から2部送られてきました。その、特集「人を裁くとは?―裁判員制度実施を前に考える」の中には、報告やルポのほかに、拙稿を含む4つの論文が掲載されていますが、とくに、木谷明氏(東京地裁判事、最高裁調査官、東京高裁刑事部総括判事などを歴任、現在は法政大学大學院法務研究科教授)による「どこを改善すべきか」という論文(談)の中に注目すべき次のような重要な指摘が含まれています。
 1.「疑わしきは被告人の利益に」とは、「常識に照らして犯人だと思われればよい」という程度の説明では不十分で、「証拠に照らしてまず間違いない」といえる場合でなければならない。
 2.最大の問題は、被疑者に対する密室での取調べ状況をそのままにしていることで、一部ではなく、取調べの「全面的な可視化」と、証拠の「全面的な開示」が必要である。
 3.公判前整理手続で予定した以外の審理が事実上できなくなるのは問題であるほか、少年事件では保護処分の選択を含む判断に裁判員制度はなじまないのではないか。
 4.裁判員裁判では無罪判決が出る可能性が多いが、検察官が控訴して原判決が破棄されたのでは、制度の意味がなくなってしまう。
 5.弁護人の負担が重くなり、弁護活動をしたくない人が増えると、検察官側の圧勝に終わることになり、改革の意味がなくなるおそれがある。
 拙稿とともに、元裁判官の木谷論文が広く読まれることを期待します。
by nakayama_kenichi | 2009-03-08 09:38