裁判員制度の「謎」
2009年 02月 06日
この本は、アメリカ人弁護士の目から見た日本の裁判制度に対する辛辣な「謎解き」の書であり、われわれの気づかない多くの注目すべき指摘が満載されていて、圧倒される思いがします。青と赤のペンで線を引きながら、つけた付箋が一杯になりました。
前半は、アメリカの陪審制度の歴史と現状を述べた部分ですが、ここではとくに「陪審制度」に対するおきまりの批判に答えて、陪審制の本当の力が法律のプロを疑う「市民のパワー」にあり、少数者を公権力から守るという救済の精神にあるといわれている点にリベラルでヒューマンな伝統の力を感じました。
後半は、日本の裁判員制度の「謎」のいくつかを指摘していますが、その前提として、日本では「お役所によるお役所のための法律」が支配していて、「市民のための市民のルール」というアメリカ的な発想とは質的に違うことが卑近な例をあげて指摘されています。そしてそれが、日本の刑事裁判の現状にも妥当し、今回の裁判員法が「市民の参加」を喧伝しても、お役所による「自白重視」と冤罪の構造は変らないといわれるのです。その例として、裁判員になれない人の「謎」(法律専門家を除く)、裁判員の「公平・誠実・品位の」の「謎」(「良心」は求められていない)、評議・評決の「謎」(密室の評議の守秘義務)などがあげられた後、結局、裁判員制度は実は「裁判官(上層部)」のためにあると結論づけられています。外国人による興味のある分析として、一読をお勧めしたい本です。


