裁判員は行司なのか
2008年 11月 12日
○ 第1は、今回の改革のきっかけになったのは、これまでの司法界が多くの欠点を抱えており、その欠陥がだんだん増幅されてきたことにあるとし、冤罪事件や強引な取調べに対する批判が今回の裁判員制度の最大の要因であるとされている点です。警察や検察庁、そして最高裁も裁判員制度の導入を嫌がりましたが、決め手はいつまでも欠点が是正されないことにあり、今回の改革が弁護士の運動の積み重ねの結果だといわれるのです。しかし、実際には、司法制度改革審議会の意見書には、司法の民主化や冤罪防止の目的はほとんど触れられず、冤罪を生み出す捜査の改革はほとんど手づかずのままです。この改革が弁護士会のイ二にシャチブで動いたとはとても思われず、むしろ内部から批判が出ているのが現状なのです。
○ 第2は、検察官と弁護人がお相撲をとりますから、検察官の立証で疑いなく有罪かどうか、そこをみて行司に徹してほしいといわれている点です。しかし、「行司」役であれば、検察官と弁護人の言い分のどちらに軍配を上げるのかが裁判員の役目だと理解されることになるでしょう。これは、きわめて危ない表現で、むしろ検察官の側の立証に「合理的な疑い」が残らない、つまり常識に照らして間違いがないと言い切れる場合のみ有罪とする趣旨であることを指摘してほしかったと思います。