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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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米イリノイ州で死刑廃止

 日本では、少年事件に関わった共犯者3人全員に最高裁判所が死刑判決を下したことを,1面トップに「元少年3人死刑確定へ」と大きく報道した3月11日の朝日新聞朝刊が、その8面の国際欄の片隅に、「米イリノイ州死刑廃止」という小さい記事を乗せています。目立たないので、あやうく見過ごすところでした。前者にも問題がありますが、ここでは、後者の問題について、TBSニュースの以下の記事を紹介しておきます。
 「米・イリノイ州で死刑制度廃止へ アメリカ・オバマ大統領の地元であるイリノイ州で、9日、死刑制度を廃止する法案が成立しました。『これは私が知事として下す決断の中で最も難しいものでした』(米イリノイ州 クイン知事)。イリノイ州のクイン知事は9日、死刑廃止法案に署名、イリノイ州では死刑が廃止されることになりました。
 オバマ大統領の地元であるイリノイ州では2003年、死刑確定囚の冤罪が発覚したことから当時の知事が死刑の執行を停止、さらに164人の死刑囚全員を減刑しました。その後も死刑制度の存廃をめぐり、激しい議論が繰り広げられてきました。
 クイン知事は、『死刑制度が殺人を抑止する効果がある、という信頼できる証拠が見つからなかった』と署名を決断した理由を述べました。法案は今年7月から施行され、これでアメリカで死刑制度を持たない州は16となります(10日10:14)」
 問題は、日本でも死刑制度が問題になっている時期に、なぜ死刑存置国で同様な悩みをもつアメリカにおけるこのような重要と思われる関連情報がもっと詳しく報道されないのかという点にあります。その上、前者の日本の死刑判決についても、せめて少年からでも死刑の適用を制限して行こうという姿勢もうかがわれず、専門家のコメントさえ付されていないのは、マスコミが余りにも保守的ではないかという印象を深くしました。
# by nakayama_kenichi | 2011-03-15 09:34

自然の猛威

  3月11日の午後に起きた東北地方の地震は、東日本全域に及ぶ超大地震となり、太平洋沿岸の広い範囲に大津波が押し寄せて瞬時に沿岸の陸地を埋没させるという悲惨な状態にまで拡大し、いまだ終息の気配もないままに、底知れぬ被害の実態が次々に明らかになりつつあります。
 ここ大津でも、震度3くらいの揺れはありましたが、これほどの大規模な災害になるとは全く思いもよらず、自然の脅威に対して、何か空恐ろしくなる気味悪さを覚えました。ニュージーランドの地震による多数の若い日本人の死亡という悲劇もまだ覚めやらぬ時期であるだけに、世界的な規模での「異常気象」が顕在化して行くという不気味な予感さえ覚えるのです。
 たまたま当日は、東京から娘がこちらに来ていたのですが、東京にまで被害が拡大していることに驚き、子供たちの安全の確認もままならないという状態がようやく落ち着くまでに相当の時間を要しました。翌12日の午後にようやく東京に帰り着くことができ、娘一家の安泰が確認されて安堵しました。
 しかし、東北の知人には、まだ連絡のとれない人もあり、心配な状態がまだ当分は続きそうです。このブログでも、今日は東日本大地震の多くの被害者の心情に思いを馳せ、自然の猛威が静まるのを期待し、できるだけ早く、救援と安全の確保が進むよう願うことで、とりあえず重い筆をおくことにします。
# by nakayama_kenichi | 2011-03-12 18:02

死刑と靖国神社

 最近、「いやな話題」と題する丸谷才一氏の短文が目にとまりました(岩波の『図書』745号32頁、2011年3月)。この「いやな話題」とは、「死刑」のことで、日本人は大多数が死刑存置論者であるにもかかわらず、裁判員制度が始まっても、死刑制度そのものをめぐる国民的討議は行われず、「いやな話題」を避けて通ろうとしているといわれるのです。
 たしかに、国内で死刑囚が再審無罪になるケースが相次ぎ、国際的にも死刑廃止国が増加しつつあるにもかかわらず、なぜ日本人がこれほどまで死刑に執着するのかというのは、ひとつの謎といえるかもしれません。
 そこで、丸谷氏は、現代日本人の死刑肯定が伝統的な「御霊(みたま)信仰」に由来するもので、仇討ちというかつての習俗は、被害者の亡魂に加害者の首級という贈り物を献げる儀式であったとし、今われわれ日本人は死刑制度という官営の儀式によって被害者の霊を鎮めようとしている。そして実は、招魂社や靖国神社は明治国家がこの信仰によりかかり、戦死者の死霊を国が慰める制度として請け負い、国民は亡魂を鎮める祀りを体制と官憲に委ねてしまったので、その結果、われわれ国民はその供養を、死刑という形で国家に任せることで、怠けているのだといわれるのです。
 たしかに、現代の日本人が死者たちに対する敬虔さを失い、哀悼の思いを共有することなく「避けている」ことが、国家による死刑制度を不動のものとして支えているともいえるでしょう。しかし、裁判員制度は、裁判官だけでなく、市民としての裁判員にも、いやおうなしに死刑の問題に直面させるようになり、この問題を「避けて通る」ことが出来なくなってきています。被害者の魂の救済と加害者の社会復帰を真剣に考慮することを通じて、死刑に正面から立ち向かう中で、死刑の停止や廃止を論議する場が生まれてくることを期待したいものです。
# by nakayama_kenichi | 2011-03-09 16:57

原稿の枚数制限

 最近、文献の紹介と合評をする研究会で、久しぶりに報告をしましたが、その内容は、法律時報という雑誌の中の「刑事法学の動き」という欄に掲載されることになっています。この研究会については、このブログでも紹介したことがあると思いますが、もう40-50年以上も前から、同志社大学内の会場で、毎月第4土曜日の夜の研究会として定着しており、現在でもまだ続いているものです。
 当日、私は一冊の書物(翻訳書)を紹介したのですが、その内容を要約することに苦労しました。あまり簡単にし過ぎると、大事な部分が省略されてしまい、内容の正確性が失われてしまうおそれがあります。とくに、その内容が微妙なニュアンスを含んでいるところでは、これを簡単に「要約」することはむずかしいものです。
 まず、報告用の「レジメ」を作成しましたが、これを何とか9枚(40字×36行)に収めるのが精一杯でした。そして、当日は、これを基にして、報告時間を気にしつつ、何とか報告することができました。しかし、問題はこれからで、これを雑誌原稿にするために、さらに縮小した「要約」版を作るという、より難しい作業が残されていました。
 編集部に確かめましたら、8000字以内ということでしたので、9枚の原稿を5枚半まで短縮しなければなりません。これは、枚数をおよそ半減するということですから、並大抵のことではありませんが、折角の雑誌掲載の機会を逸しないために、あえて試みることにしました。
 報告の翌日の2月27日(日)から始めて、もっぱらこの仕事に集中し、何回も試行錯誤と推敲を重ねながら、しかし3月2日(水)の夜9時には、何とか完成し、すぐに雑誌編集部に5枚半の原稿を送信して、この仕事を全部終えました。安堵感と爽快感が残りました。
# by nakayama_kenichi | 2011-03-05 21:14

民法改正反対意見

 民法は私の専門ではありませんが、最近問題になっています債権法改正に対する反対意見書(加藤雅信・上智大学教授)の中に、注目すべき指摘を発見しましたので、全面的な賛意を表するとともに、とくに以下の点を紹介しておきます。
  「法制審議会民法部会は、“行政機関職員を審議委員にしない”とする平成11年の閣議決定に違反している。さらに民法のユーザーである民間出身の委員が4分の1以下であり、また、異論を有するであろう者を排除する等、審議会の構成としての公正さに欠けるところがある」(法律時報83巻3号74頁)。
  そこで、さっそく問題の「閣議決定」を参照しましたら、たしかに「審議会の整理合理化に関する基本計画」(平11・4・27閣議決定)の「指針」の中に、審議会等の委員の選任について、「府省出身者の委員の任命は、厳しく抑制する。とくに審議会の所管府省出身者は、当該審議会の不可欠の構成要素である場合、または専門的な知識経験から必要な場合を除き、委員に選任しない」という指摘が現にありました。この点からすると、今回の法制審議会・民法部会の委員構成は、反対論者を排除したもので、「手続の公正を欠く」という批判が当たっています。
  ところが、このような「官僚的」手法は、法制審議会の刑事法部会では、もっと公然とした形で横行していることに注目しなければなりません。たとえば、「危険運転致死傷罪」の立法過程(平成13年)での「法制審議会刑事法部会」の委員16名のうち、法務省(検察)、警察庁に関係する5名(幹事は8名のうち4名)が「府省出身者」で占められており、したがって議事も「事務当局」の主導で行われることが当然視されてきているのです。これは、上記閣議決定の重大な違反として警鐘乱打されなければならないところであり、この点を見逃して来た刑事法学者の自己怠慢も反省しなければなりません。
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             3月3日雛人形(マンション内)
民法改正反対意見_c0067324_19525177.jpg

# by nakayama_kenichi | 2011-03-02 09:24