最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
カレンダー

<   2009年 08月 ( 15 )   > この月の画像一覧

国旗・国歌法10年

 8月8日付け朝日新聞の文化欄に「国旗・国歌法成立10年―踏み絵としての斉唱」という記事があるのが目にとまりました。学校の行事の際の「国歌斉唱の強制」の問題については、このブログでも取り上げたことがありますが、一向に解決するどころか、かえって強制が定着化し、挙立して歌わない教職員には校長の職務命令や教育委員会の監視が行われ、従わない者には懲戒処分が科されるという異常な状態がすでに恒常化してしまっています。
 問題なのは、この国旗・国歌法が国会で審議されていた際には、国歌の斉唱などを強制しない旨の政府側の答弁が繰り返されていたという事実です。その後の本法の執行状況は、明らかにこの答弁に真っ向から反するものであり、一種の詐欺的行為とさえ言える法の悪質な運用であるといわざるを得ません。
 その上、この前にも書きましたが、国歌の中に歌われている「天皇」ご自身が、園遊会の際に、東京都の教育委員長に対して、強制することのないよう附言されたという報道がなされていることも、当然に考慮されるべき点でしょう。
 上の新聞記事は、東京の公立小学校の音楽の1教諭が、すでに減給処分を4回も受け、次に予想される停職処分を避けるために休みを取るなどの苦労に耐えている実情を例に挙げた後、以下のように締めくくっています。「公立小・中・高での斉唱率はほぼ100%に達する。また、校長の職務命令などが思想・良心の自由を侵すと見るかどうかは、裁判所によっても判断の分かれる問題ではある。だが命令に痛みを感じる者がわずかでもいる限り、その心に思いを巡らすことが民主主義には決定的に大切であるはずだ」。
 とくに、戦前の国旗・国歌がそのまま戦後も通用している状況の中では、私などの戦中派は本能的な拒絶反応を抱かざるを得ないことを告白しておきたいと思います。
 
 
[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-08-09 21:30

裁判員法第1号事件

 新しい裁判員法の実施第1号事件の審理が、8月3日から8月6日までの4日間の連続開廷で早期に終結しました。テレビや新聞は、その経過と内容を連日にわたって詳しく報道しましたが、それは、裁判員の選出手続から始まって、第1回公判からの審理の進行状況、そして最終的には、判決の内容を伝えるとともに、裁判員の感想や、担当した検察官や弁護士、さらにはいわゆる有識者の談話にも及んでいます。そして、一般には、まずは無難な門出(好発進)として評価されているといってよいでしょう。
 この第1号事件は、いわゆる「否認事件」ではないので、最初から有罪が予測されており、「量刑」(どの程度の刑罰を科すのか)に関する裁判員の対応が問われるというケースでしたから、それほど問題があるとは思われなかったのですが、しかし細かく見ますと、このような単純と思われる事件の審理においても、すでにいくつかの問題があり、今後の課題をかかえていることに留意しなければなりません。
  第1は、裁判員が加わった量刑の結論が、専門家が予想したよりも重かったという事実です。いろいろな事情の中でも、私見では、被害者側の求刑が重かったという点に影響されたもので、今後の厳刑化の傾向に警戒が必要だと思います。
  第2は、裁判員の発言や質問が実は裁判官の示唆によるものではないかという憶測を呼んだ点です。これは、ある程度予測されたところですが、裁判員が裁判官に積極的に質問するという場面をこそ期待したいところです。
  第3は、本件でも、裁判官による刑事裁判の原則(疑わしきは被告人の利益になど)に関する「説示」がいつ、どこで行われたのかはっきりしないという点です。この説示こそ、裁判員裁判に必須のものであることが、どこにも触れられていないのが残念です。
[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-08-07 11:00
 7月29日(水)の夕食後、マンション内の勉強会の第1回として、「高齢者向けマンションで暮らす『住縁』を生かすために」と題する講演会が開かれ、多くの入居者が集まりました。このマンションの入居者で、マンション管理学などを専門に勉強しておられる、まだお若いSさんのお話で、入居者の関心にぴったりのテーマでした。Sさんは、パソコンのパワーポイントを使って、いくつかの画像を示しながら、やさしく解説されましたが、以下はその要点です。
 第1は、高齢者をとりまく一般状況として、1980年代には生産年齢人口層がなお厚く、老後の生活保障が充実していましたが、2000年代から少子高齢化が鮮明になり、介護の社会化、施設から在宅へという方向が見え、2020年代には人口の減少と高齢化が進み、生活単位の個人化の中で、看護・介護・生活サービスの確保が問われているというのです。
 第2は、増加する高齢者数と高齢化率について、2008年の高齢者人口は2822万人(高齢化率22.1%)、ピークは2042年で3863万人、2050年の高齢化率は40.5%まで上がり、進む長寿化によって、平均寿命と平均余命がさらに上って行くという見通しが示されました。
 第3は、高齢者向け住宅の種類について、高齢者専用の賃貸住宅のほか、最近はシルバーハウジングなど、高齢者用分譲マンションが増えつつあるが、その一つとしてこのマンションがあるという位置づけをされ、スェ-デンのコレクティブハウスなどの写真も映されました。
 第4は、マンションの管理に関して、所有権や管理組合の役割や管理形態などの制度上の説明があった後、最後に、シニア・マンションの可能性として、豊かな共用空間と入居者の交流と相互扶助による安心・安全をあげて、話を締めくくられました。
 私ども入居者としては、とくに最後にいわれた豊かな共用空間の利用と相互扶助による安心というシステムと精神に最大の共感を覚えました。
 
[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-08-05 13:42

公訴時効の延長・廃止

 「公訴時効」とは、犯罪が行われてから一定の期間を過ぎると、検察官が起訴できなくなるという制度のことで、刑事訴訟法250条は、刑の重さに応じて、たとえば、死刑に当たる罪については25年、無期刑に当たる罪については15年などと定めています。
 公訴時効の制度の根拠としては、時の経過によって社会一般の処罰要求や社会の動揺が弱まって行くだけでなく、証拠も散逸して公正な裁判の実現も困難になるといった点があげられています。ところが、最近、とくに犯罪の被害者団体を中心に、被害者の処罰要求は時の経過によって消えるわけではなく、DNA鑑定で昔の事実を立証できるので、真犯人の「逃げ得」を許さないために、とくに殺人罪の公訴時効を撤廃すべきであるという要請運動が高まり、法務省当局に法改正を促す状況が生まれています。
 そして現に、法務省は公訴時効の「見直し」に着手し、2009年3月に「中間報告」を作成して、見直しのための4つの具体案を提示し、最近に至って、殺人罪の公訴時効の廃止を含む時効期間延長案を固めたといわれています。今後は、これが法制審議会の審議を経て国会に上程されるということになりそうです。
 しかし、そこには原則的な疑問があります。たしかに、被害者の処罰要求は時の経過によっても変らないともいえるでしょうが、時効制度は、社会一般の処罰要求と社会の変化に対応する国の政策として承認されてきたものであり、DNA鑑定だけで人を有罪とすることもできないのです。まして、冤罪犯人が一生訴追の危険を負うというのも酷でしょう。
 それに、公訴時効は、2004年に期間の延長を認めたばかりなので、一挙に撤廃にまで突っ走るのは、あまりに感情的な対応であり、もっと慎重な検討が必要だと思われるのです。
 
[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-08-03 16:54

今年の8月

 7月30日と31日は東京に出ていましたので、一夜明ければもう今日から8月です。昨年の8月1日と比較しますと、まず天候の異変に気づきます。昨年は、連日早朝から日射がはげしく、急遽「すだれ」を二重にしましたが、起床直後からクーラーをつけないと辛抱できないほどの暑さでした。しかし、今年の夏は様変わりで、真夏というのに、ほとんど太陽が見えず、朝から曇天の蒸し暑い梅雨空が続いており、8月になった今朝も同様です。特別に防熱用のカーテンをつけたのですが、その効果がわからないというのも皮肉な現象です。四国などは梅雨明けの予報が出たようですが、とくに北海道を含む北日本の「冷夏」が先行きの暗い農業に追い討ちをかけることが心配されます。
 しかし、それでも8月には、夏に特有の行事があり、小学生や中学生だったころ以来の「夏休み」という独特の雰囲気があるのも事実です。甲子園の野球大会などのほか、お盆を前に墓参りの予定があり、ここ大津には琵琶湖の夏の夜空を彩る「花火大会」も予定されています。
 そのほか、8月は私ども研究者にとっては、いわゆる「かきいれどき」で、何かまとまった仕事に集中できるチャンスでもあります。月例研究会は休会ですが、恒例の夏季合宿の予定も組まれています。私自身は、遠路の外出と宿泊にはいささか不安があり、出席をためらっていますが、この夏は少なくとも「論文集」第13巻の完成に目処を立てたいと考えています。裁判員法にもとづく裁判の開始にも注目を怠ってはならず、臓器移植法の改正の行方もフォローしなければなりません。
 そして、今年の8月の最後には、政権交代の可能性を問う総選挙という最大のイベントが予定されています。このチャンスを生かして、国民主権の本来の姿が見直されるようになることを期待したいものです。

c0067324_11222933.jpg

[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-08-01 09:45