最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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2010年 10月 23日 ( 1 )

 10月16日(土)の午後、大阪で月例の「刑事訴訟法研究会」が開かれ、大阪の石川弁護士が、「最高裁平成22年4月27日判決について」報告されました。この事件は、大阪の母子殺人事件(平成14年発生)として著名なもので、当時44歳の被告人が、息子(養子)の妻(当時28歳)およびその長男(当時1歳10月)を、息子宅であるマンションの室内で殺害し、その後、同室内で放火したとして起訴された事案です。
 第1審の大阪地裁は、被告人の犯人性を推認させる間接事実が相互に関連し合ってその信用性を補強し合い推認力を高めているとして、有罪とし、無期懲役に処しましたが(平成17年8月3日)、控訴審である大阪高裁は、検察官の控訴に理由があるとして、死刑判決を言い渡しました(平成18年12月15日)。
 しかし、上告審である最高裁は、事実誤認の主張にまで踏み込んだ職権による調査を行い、第3小法廷は、結論として、死刑決を破棄し、審理不尽の違法と事実誤認の疑いがあるとして、大阪地裁に差し戻すという逆転の判断を下したのです(4:1)。
 本件では、被告人と犯行を結びつける直接証拠がなく、被告人も捜査段階から一貫して、そもそも息子宅の所在も知らず現場に行ったこともないと否認していたため、「情況証拠」(間接事実)から被告人を犯人と認定できるかが最大の焦点になっていました。
  第1審判決は、いくつかの間接事実のうち、被告人のDNA型と一致する型をもつ細胞の付着したたばこの吸殻が現場マンションの階段にある灰皿内から発見されたという事実が、本件当日に被告人が同マンションに赴いた事実を推認させる中心的な根拠になるとしていました。そしてこの灰皿には、被害者が吸っていたのと同一の銘柄のものがあったことも、間接事実に加えられていました。控訴審判決は、1審が認めた被告人の自白調書の任意性を否定したものの、1審の事実認定はそのまま認め上で、刑を加重して死刑にしたのです(続)。
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by nakayama_kenichi | 2010-10-23 11:34