最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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2010年 01月 22日 ( 1 )

 「研修」という月刊誌を贈ってもらっていますが、今年の新年号(2010年1月、739号)に、「検事総長」の「年頭にあたって」という文章が載っていましたので、検察当局の幹部が今何を考えておられるかという関心から目を通してみました。
 まず、検事総長の樋渡利秋氏は、平成21年版の犯罪白書によると、平成20年も犯罪の発生件数が減少したこと、それは一般刑法犯だけでなく裁判員裁判対象事件(重大犯罪)も同様の減少傾向にあることを指摘した後で、それでも国民の間に治安が良くなったという感覚がないのは、連日報道される凶悪な殺傷事件のほか、コンビ二強盗など世の中の不況を背景とした犯罪が目立つようになったからだと指摘されています。失業率の増加が犯罪を増加させるおそれがあり、安心できる状況にはないというわけです。
 そして、裁判員裁判との関係では、裁判員の積極的な参加が得られていることとともに、刑の執行猶予判決には保護観察(社会内での指導監督と補導援護)が多く付くようになったのは、犯罪者の再犯防止と社会復帰を促進するものとして歓迎すべきだといわれています。そして、刑事司法に携わる者としては、犯罪者の更正を願う国民の声を真摯に受け止め、犯罪の防止に正面から取り組んでいく必要があるといわれるのです。
 以上のような指摘は、それ自体としては筋の通った正論であると評することができるでしょうが、最後のところで、21世紀のキーワードは「トレランス(寛容)」といわれているとの指摘が出てきますと、それが上のような状況とどのように関連するのか、うまく理解できそうもありません。一方では、死刑を含む厳罰主義がすっかり定着し、被告人の人権よりも被害者の利益を優先させ、公訴時効まで廃止または延長しようとする「刑事政策」が、どのようにして「寛容」とつながり得るのか、その接点はどこにあるのかを示してほしいものです。たとえば、被疑者・被告人の「取調べの可視化」に対する検察当局の前向きの対応を期待したいと思います。
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by nakayama_kenichi | 2010-01-22 21:00