最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

2009年 02月 07日 ( 2 )

韓国の国民参与法(2)

 次に、韓国ではすでに国民参与法は1年前から実施(試行)されていますので、2008年1年間の実施状況が興味を惹くところです。
 まず、2008年に実際に参与法裁判が行われたのは60件にとどまり、それは事前の予想(100ないし200件)をも下回り、とくに首都のソウル近辺が少ないとのことです。参与法の対象事件が約2000件といわれていますので、その比率はわずか3%ということになります。その理由は、被告人側が参与法裁判をなかなか選択しないほか、いったん選択しても、途中で撤回し、あるいは裁判所が排除決定をして従来の裁判をするケースが多いからだといわれおり、その中には、プライバシーを含む性犯罪や大型の否認事件などが含まれているとのことです。
 一方、参与法裁判は迅速に行われ、1ないし2日のうち、むしろ1日で終わるものが多く、陪審員が熱心に参加して、評議が深夜に及ぶこともあるという指摘も興味を惹くところです。それは、それ以上に負担の大きい事件は参与裁判から排除されているからだと思われます。
 次に、60件の参与裁判のうち、無罪ないし縮小認定されたものが27件もあり、その後の裁判所による修正はあるものの、無罪率が高いことは事実のようです。ただし、60件のうち52件が控訴されているという事実も注目に値するところですが、控訴審の状況の検討は今後の課題とされています。今後の成り行きのフォローが期待されるところです。
 なお、本稿にも触れてありますが、韓国では、取調べの過程が全面的に録音・録画され、弁護人の立会いまで認められていることが、わが国との最大の相違点であって、わが国は国際水準に達するために、まずはこの状態をこそ「改革」すべきであると感じました。
[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-02-07 20:58

韓国の国民参与法(1)

 近着の法律雑誌(刑事法ジャーナル15号、2009年)の中に、「韓国における国民参与裁判の現状」と題する論文が掲載されていました。これは、お隣の韓国の国民参与法について、制度の特色の紹介とともに、発足1年間の実施状況についても言及されており、それが現職の裁判官の手になるものである点でも注目を惹きました。ここではその内容を紹介しておきます。
 まず、制度的な面では、韓国の参与法には、わが国の裁判員法と違う点がいくつかあります。第1は、参与法が裁判の現状に対する不信感から国民が強く要望したこと、したがって陪審員への参加がより積極的であること、第2は、本法の趣旨が司法の民主的正当性と国民の信頼を高めることを目的とするとして、「司法の民主化」の理念がうたわれていること、第3は、国民参与裁判が「選択制」になっており、被告人は従来の裁判も選ぶことができること、第4は、事前に行われる「公判準備手続」も公開されていること、第5は、参与法裁判の効力が勧告的なもので裁判官を拘束しないことなどの点です。
 これをわが国の裁判員制度と比較しますと、裁判員法は国民運動からではなく裁判への国民の信頼を上から期待するという趣旨のもので、国民は受身で負担と感じていること、選択制ではなく、すべての重大事件に適用されるので負担が余計に増大すること、裁判員が入る前の「公判準備手続」が当事者だけの非公開でなされること、評決は拘束力を持つので、死刑判決を含めて責任がより重大なことなどの点をあげることができます。
 私見では、韓国の参与法の方が、理念的にも実際的にも、はるかにリベラルですぐれているように思います。もっと隣国の状況から学ぶべきだと思うのです。
 
[PR]
by nakayama_kenichi | 2009-02-07 09:44