最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

2006年 01月 21日 ( 1 )

「堀越事件」の証言

 1月20日、いよいよ「堀越事件」(公務員の政治活動違反)について、学者証言をする日が来た。私は、これまでにも立て看板事件やビラ貼り事件などについて法廷で証言する機会が何回かあったが、東京地裁に出頭すのは初めての経験である。第104号法廷は弁護団席も傍聴人席も満員という緊張した雰囲気の中で、私は、午後3時10分から4時半過ぎまで、弁護団の質問に答える形で発言をし、できるだけ論点をもらすことのないように注意しながら、原則的な理論問題とともに本件の具体的な適用問題にも言及して証言を終えた。その直後の裁判所の対応が注目されたが、裁判長は、検察官からの質問がないことを確認し、裁判官の側からも質問を全くすることなく、そのまま閉廷となった。この点からも、本件の裁判の今後の予測はなお不透明であるといえよう。
 私は、この事件に関して、昨年始めに弁護団から依頼を受け、すでに5月段階で「公務員の政治活動に対する罰則の適用について」と題する「意見書」を作成し、そこでは人事院規則14-7の問題点と本罪の保護法益論を中心的に論じた。しかし、その後の検討から、新たに本件に特有の問題として、政党機関紙の郵便受けへの「投函行為」時には相手方が不在であり、行為の「外形」から見てもそれが「公務員の政治活動」であることは一般に認知できないような場合にも、「公務の中立性に対する国民の信頼」を動揺させるおそれがあるのか(本罪の「法益侵害」があるのか)、また勤務場所の外で、勤務時間外に、職務を離れた一人の「市民」として政党機関紙を配布するという行為まで一律に処罰することは、さきの「公務の中立性に対する国民の信頼」の動揺という観点からも、疑問でないかという趣旨の「意見書(その2)」を今年の1月に急いで作成し提出していたので、当日は、これらの意見書の趣旨を改めで口頭で説明し敷衍するという方法をとった。
 この事件の審理に当たっては、憲法(3人)、アメリカ法、刑法、刑訴法、国際法の7人の学者証言のほかにも、全部で13人の専門家の意見書の提出が予定されている点でも異例であるが、しかもそれらのすべてが現行の立法とその解釈・適用に基本的な見直しを求めるものであって、逆に国公法による本件の処罰を肯定する趣旨の証言や意見書はひとつも提出されていないという点でも、きわめて異例であることに注目しなければならない。
 裁判所の勇気のある決断を望みたいところである。
 なお、私の「意見書」の内容は近く公表する予定である。
 
[PR]
by nakayama_kenichi | 2006-01-21 11:05