最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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2005年 04月 08日 ( 2 )

臓器移植法の改正案

 現行の臓器移植法は、難産の末に、1997年6月17日に成立し、附帯決議による1か月の猶予期間を経て、同年10月16日から施行されたものです。現在まで7年半ほど経過していますが、その間の脳死移植は37例を数えています(年に約5例)。
 施行後3年の見直しが予定されていましたので、これまでにも改正をめぐる論議がなされてきましたが、問題の複雑性もあって、なかなかまとまらない状態が続いていたのです。
 ところが、最近の報道では、自公両党が検討を進めてきた改正案がまとまり、「脳死を人の死」と定義した上で、本人の同意がなくても遺族の同意があれば臓器の提供を認める内容の改正案を来月にも議員立法として国会に提出することになったとのことです(毎日4月6日)。
 現在は、政府与党が意思決定をすれば、法案が難なく国会を通過してしまうという危ない状態にありますので、この改正案も難なく通ってしまうおそれがあります。
 しかし、この改正案には、このような形で簡単に処理してしまうにはあまりにも重大な問題が含まれています。世論も、子供のl臓器移植を認める方向に提供要件を緩和することには賛成が多いとしても、「脳死は人の死か」という問題については依然として慎重な意見が多く、臓器移植法の成立時とそれほどの変化は見られないようです。
 小児科学界では臓器提供可能年齢の引き下げ提案がなされ、また虐待児が対象になる危険も指摘されているほか、脳死判定が本当に正確に行えるのか、脳死移植の際に麻酔剤が用いられていることの意味を問うなど、基本的な疑問点が解消されているとはとても思えないのです。
 少なくとも、これまでの論議を冷静かつ慎重に再検討することの必要性を指摘しておきたいと思います(私自身がこの問題をまとめたのとして、「臓器移植と脳死ー日本法の特色と背景」成文堂2001年、がありますので、参照願います)。
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by nakayama_kenichi | 2005-04-08 22:31
 最近の報道では、地方公務員の政治活動にも国家公務員と同様に罰則規定を設けるよう求める動きが自民党の中にあり、プロジェクトチームが改正要綱までまとめたといわれています(朝日2005年4月7日)。
 私は、すでにこの欄で、国家公務員法102条と人事院規則14-7が国家公務員の政治活動の違反行為に対して罰則を規定しているのは問題であることを指摘し、それは地方公務員法に罰則がないのとはアンバランスとなっているが、むしろそれは地方公務員法を制定した当時の国会の方の「良識」を評価すべきであるとしました。
 ところが、今回の自民党内の動きは、国家公務員法と地方公務員法とのアンバランスを、地方公務員法の方を改正して国家公務員法なみにすることによって解消しようとするのです。しかし、これは驚くべき時代錯誤であるといわなければなりません。
 詳しくは、今執筆している論文にゆずりますが、現行の国家公務員法の規定には、その制定時に当時の占領軍当局の強い圧力の下でようやく成立したという歴史的な経緯があるほか、公務員の政治活動に対して「刑罰」を科すという立法例は、他の諸外国ではほとんど見られない異例のものとなっている「国際基準」に逆行するという疑問がつきまとっています。
 資金集めのことが問題であれば、選挙法や政治資金規正法の方で手当てすべきものであって、これを公務員の服務規律の問題と混同すべきではないと思われます。むしろ、うやむやになっている橋本前首相の「ヤミ献金」問題の追及こそ、焦眉の課題であるというべきでしょう(朝日社説2005年4月8日)。
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by nakayama_kenichi | 2005-04-08 15:24