論語物語
2008年 08月 23日
「論語」は、戦前の旧制中学の時代に「漢文」という科目があり、そこで論語や孟子などを学んだという古い記憶がありますが、その後はすっかり遠ざかっていました。いま「論語」そのものを読むのは大変ですが、この『論語物語』は、作家で社会教育家でもある「下村湖人」氏が、戦前の昭和13年に出版した歴史的な名著であり、2千年以上も経た「論語」の章句を自由自在に使って、「論語」で養われた自分の思想を「物語」の形式で構成したもので、孔子とその弟子達が、古い衣を脱ぎ捨てて、現代に躍りだすという光景が、みずみずしい現代語で、たんねんに描きあげられていますので、現代語で楽に読むことができます。
ただし、各章の前後には、「論語」の引用があり、注釈がついていますので、難解な古い文語体の名文やことわざを拾い読みすることもできます。たとえば、「子いわく、知者は惑わず、仁者は憂えず、勇者は懼(おそ)れずと」、「子いわく、朝(あした)に道を聞かば、夕(ゆうべ)に死すとも可なりと」などなど。
以下は、子が親を訴えた事例に関する箇所の引用です。「法律も法律なるがゆえに正しいのではなく、それが人間と人間との関係を、愛に満ちたものにすることができる限りにおいて、正しいのです。ことに親子の愛は愛の中の愛であり、人間界のいっさいのよきものを生み出す大本なのです。それを法律の名によって、平気で蹂躙することを許すような国に、正しい道が行われる道理はありません」。これは、孔子が親族相隠を例に、厳罰主義を戒めたものです。