最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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アインシュタインと社会主義

 田中正氏の近著『湯川秀樹とアインシュタイン』(岩波書店2008年)には、多くの興味ある情報が含まれていますが、その中でも、アインシュタインが、米国への亡命後も、一貫して社会主義に理解を示していたのに対して、「ラッセルーアインシュタイン宣言」(1954年)で共に核戦争の廃絶を訴えたバートランド・ラッセルが強硬な「反共主義」者であったといという対照的な対応が見られたことが注目を惹きます。
 しかし、そのアインシュタインも、1949年の著書の中で、社会主義を支持すると同時に、その末尾で次のような懸念を表明していたという点にも注目する必要があるでしょう。
 「それにもかかわらず、計画経済はまだ社会主義ではないことを想起する必要があります。計画経済そのものは、個人の完全な奴隷化を随伴します。社会主義の達成は、次のような極度に困難な社会政治的諸問題の解決を要求しているのです。つまり政治的・経済的な力が広範囲にわたって中央集権化している場合に、官僚が傲慢にも権力をほしいままにすることを防止するには、どうすればいいのか? また個人の諸権利をどうして保護し、それとともに官僚の権力に対する民主的対抗力を、どうして確保できるか、という問題です」。
 さすがに鋭い洞察力のある指摘であり、実際にソ連はこの課題を解決できずに崩壊しました。
 なお、ラッセル自身は、1920年にソ連を訪問して、レーニンや他の指導者達と長時間話し合った末に、彼らのもくろんでいることが自由な世界観の人のだれもがもつ願望とはまったく反対であるという結論に到達したと述べていながらも、他方では、世界の偉人として、「一にアインシュタイン、二にレーニン、あとはいない」といっていたという逸話も残っているようです。
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by nakayama_kenichi | 2008-07-20 22:22