湯川秀樹とアインシュタイン
2008年 07月 18日
湯川秀樹とアインシュタインという2人のノーベル賞受賞学者は、戦前の1939年に一度出会っていますが、本格的な出会いは戦後の1948年以降のことで、ともに核兵器の全廃のための平和運動に協力するという全世界的な課題に関して深い親交関係があったことが、当時の詳しい資料に基づいて、情熱的に紹介されています。
しかし、同時に、戦時中は、アインシュタインもナチスの台頭の前に原爆開発をアメリカに示唆したこと、また湯川博士も日本の原爆研究に抵抗しなかったという事実にも言及があり、とくに湯川博士は、これを「知識階級の勇気と実行力の欠如」として反省し、戦後の数年間、堰を切ったように「核時代の到来と人類の転換」を訴え、とくに「世界連邦」運動に挺身することになったといわれています。
本書には、著者と共同研究者との間のかなり突っ込んだ「対話」が含まれているのも、きわめて有益ですが、私がブログで紹介したことのある「京大教官研究集会」での湯川博士の講演にも言及されています。とくに、戦前を知らない若い世代の方々に読んで頂きたい本です。