最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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湯川秀樹とアインシュタイン

 最近、私が京大在職時代に、理学部物理教室で湯川博士の教えを受けた同世代の友人である田中正氏から、『湯川秀樹とアインシュタイン』(岩波書店2008年)という書物の寄贈を受けました。これは、すでに予告されていた待望の書でしたので、一種の感慨をもって興味深く読み通しました。物理学の専門に関するところは分かりませんが、本書の主題である「湯川博士の思想(科学・平和)の原点」を改めて知ることができて、久しぶりに人類の過去と未来の運命に関わるスケールの大きい根本的な問題意識に心を揺り動かされました。
 湯川秀樹とアインシュタインという2人のノーベル賞受賞学者は、戦前の1939年に一度出会っていますが、本格的な出会いは戦後の1948年以降のことで、ともに核兵器の全廃のための平和運動に協力するという全世界的な課題に関して深い親交関係があったことが、当時の詳しい資料に基づいて、情熱的に紹介されています。
 しかし、同時に、戦時中は、アインシュタインもナチスの台頭の前に原爆開発をアメリカに示唆したこと、また湯川博士も日本の原爆研究に抵抗しなかったという事実にも言及があり、とくに湯川博士は、これを「知識階級の勇気と実行力の欠如」として反省し、戦後の数年間、堰を切ったように「核時代の到来と人類の転換」を訴え、とくに「世界連邦」運動に挺身することになったといわれています。
本書には、著者と共同研究者との間のかなり突っ込んだ「対話」が含まれているのも、きわめて有益ですが、私がブログで紹介したことのある「京大教官研究集会」での湯川博士の講演にも言及されています。とくに、戦前を知らない若い世代の方々に読んで頂きたい本です。
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by nakayama_kenichi | 2008-07-18 13:03