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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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韓国の陪審制度

 わが国では、いま、国民の司法参加という名のもとに、いわゆる裁判員制度の導入が来年5月から施行と決まっており、表面上は着々と準備が進んでいるように見えますが、しかし実際には、国民の間の市民参加への関心は予想外に低く、法曹専門家の間にも異論があり、延期論まで出ているという状況にあります。それが、絶望的といわれるわが国の刑事司法の改革につながるのかという点からしますと、市民参加によっても、代用監獄における密室での長時間の取調べ、長い勾留期間、極端に低い無罪率、死刑判決の増加といった現状にメスが入るという保障がないところに悲観論に傾く根拠があると思われます。
 これに対して、お隣りの韓国でも、陪審法(刑事裁判参与法)が2007年6月に制定され、すでに施行されていますが、その内容には、きわめて注目すべき点があります。そこでは、アメリカ風の陪審制度が導入されたのですが、何人も国民参与裁判を受ける権利があると明記されただけでなく、被告人が希望しなければ国民参与裁判は行わないとして、選択制が認められているのです(日本では選択権なし)。陪審員の全員一致判決が要件とされ、裁判所はそれに拘束されないけれども、異なる判決をするときは理由を記載するという形で調整されています。
 しかも、韓国では、公判準備期日を含めて公開するものとされ、刑事訴訟法の改正によって、捜査手続が透明化され、弁護人の立会権を含めて、身柄不拘束による捜査の原則が導入されるなどの司法改革が実現しつつあるという驚くべき状況が見られるのです。死刑の執行が停止中であることも含めて、わが国をはるかに越えているのです。
 お隣りの韓国に注目し、もっと学ばなければなりません。
by nakayama_kenichi | 2008-05-20 21:29