最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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ハーケン・クロイツの呪い

 ハーケン・クロイツ(Hakenkreuz)とは、「鉤十字」、つまりナチスの記章のことを意味します。今の若い人は余り知らないでしょうが、戦前はナチスのヒットラーが制服の左腕に巻いていた腕章として有名なものでした。
 最近、古い「立命館学誌」(182号、昭和10年6月12日発行)に、当時(昭和8年)瀧川事件で京大を追われた瀧川幸辰教授が寄稿している文章が残されていることを知り、そのコピーをもらいました。その題名が「ハーケン・クロイツの呪い」というものです。
 瀧川教授は京大を追われましたが、立命館大学では講義されていたらしく、本稿の最初には、夜間部入学生を迎える辞として、「困難に居てしかも、結果は人並いや人並以上なものを得るというのが、真に困難に処する道であります。諸君は決して自己弁解に陥ってはいけない。同情は人に対してするもので己に対してするものではありません」と励ましておられます。
 ところで、瀧川教授は、ハーケン・クロイツの呪いが、共産党とユダヤ人の排斥に向けられており、当時のドイツの大学から追放されたのは、ユダヤ人とナチス国家を支持する証拠を積極的に示さない人たち―主として社会民主党に属する人々であったとし、著明な学者では、カントロヴィッツ、ケルゼン、ラートブルフ、ジンツハイマーらが被追放者の中に含まれており、このうち、ラートブルフを除けば明らかにユダヤ人であったといわれています。
 世人はユダヤ人を亡国の民と呼びますが、当時のドイツの大学には、種々の不利益な取扱いを受けながらも、各分野で傑出したユダヤ人の学者が多かったといわれています。しかし、とくにドイツ南部ではユダヤ人排斥の傾向が根強く、すでにナチス以前から、ハーケン・クロイツの描かれた電柱が多く見られ、本文にもその写真が掲げられています。教授によれば、それは「災厄および悪魔を払う記号」ではなく、むしろ災厄および悪魔の象徴に他ならないのです。
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by nakayama_kenichi | 2008-04-07 14:30