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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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冤罪と取調べの可視化

 最近、冤罪(えんざい・無実の罪)による無罪判決の報道が目立って増えてきています。鹿児島や富山だけでなく、最近大阪では少年が少年院送致を取り消される事例があり、また福岡でも殺人と放火について無罪とした判決が大きく報じられました。
 これらの冤罪事件に共通するのは、警察段階における取調べ段階で、「私はやっていない」とする被疑者に犯行を「自白」させる捜査手法であり、かつてから言われてきた「長時間の密室での取調べ」の弊害と実態がいよいよ明るみに出てきた感じがします。
 それは、警察・検察での取り調べの過程を「可視化」、つまり外部から分かるようにすることで防げるわけで、そのために、すでに諸外国では弁護人が立ち会ったり、捜査過程をビデオで録音・録画することが国際水準として確立しているのです。
 それは、西欧諸国のことで、わが国では事情が違うという言い逃れも行われてきたのですが、最近の情報では、西洋のみならず、お隣の韓国や台湾でも、映像録画制度の導入や弁護人の立会権まで認める方向に制度改正が進んできているのです。
 もちろん、わが国の法務省や検察・警察の幹部がそのような国際的な情報を知らないわけではないのに、この点は黙して語らず、わが国ではまだ従来の制度が、犯人の摘発と治安維持のために必要であるという態度を固執しています。
 その上に、「警察捜査における取調べの適正化に関する有識者懇談会」(議長=平良木登規男・慶応大学名誉教授)も、捜査過程の全面的な可視化には慎重な姿勢であるといわれています。国際的な孤立化の中で、冤罪が絶えないという悲しむべき現状を早急に何とかしなければなりません。
by nakayama_kenichi | 2008-03-06 14:45