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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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40年の平裁判官

 最近の『青年法律家』という雑誌(青年法律家協会弁護士学者合同部会発行、434号、2007年4月26日)には、24歳から65歳まで約40年間、転勤もせず、裁判長や地裁所長、高裁長官などには一切出世もしない「平の裁判官」としての道を淡々と歩んだ下澤悦夫氏の手記が掲載されています。これはぜひ一読の価値があると思い、紹介することにしました。
 注目すべき多くのことが書かれていますが、ここでは、裁判官の再任・転勤問題について書かれているところを、以下に引用しておきます。
 「裁判官再任問題―転勤問題は、裁判官のあり方を規定する重要な問題です。再任されるかどうか、おそるおそる10年目を迎えるということは、裁判官にとって非常に負担になっています。でありながら、定年までキャアリア裁判官として転勤しながら、昇級していくというキャリアシステムもとっている。そうしたキャアリアシステムをとりながら、10年で再任するかどうかは最高裁の勝手である、というのが最高裁の見解です。これはいいとこどりで、10年の任期で裁判官を排除できるということのメリットと、転勤をさせながら選別ができるというキャリアシステムのメリットの両方を得ているのです。
 ですから私はこれを逆用して、昇級しなくてもいいから転勤しない、という取り組みをしました。平で終わったというのはそういうことです。個人的には非常に良かった。家族が助かった、子どもの転校の回数が減った、そういうメリットを自分のものにしたということです。すべては裏と表があって、私は40年間、平であったということについては、腹が立ちますが、考えようによってはうまくやったなという気もするわけです」。
 判事補から判事への再任が拒否された宮本裁判官は10年でやめて、象徴的な事件となりましたが、下澤裁判官は辞めないで、どんなみすぼらしい形になっても裁判所の中で生き延びようと考えたといわれています。その間、最高裁の雰囲気は変わったが、中身は変わらず、しかし下澤を締め付けないという楽しさがあったと述懐されているのです。
 係属している事件の途中でも、時期がくれば裁判官が変わるというのが常態化している現状の中で、これに抵抗する裁判官もいることに共感し拍手を送りたい気持ちです。
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by nakayama_kenichi | 2007-05-09 22:45