最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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「司法精神医療」とは何か

 いわゆる「心神喪失者等医療観察法」によって、重大な他害行為を行った精神障害者を検察官の申立てによって裁判所が指定医療機関への入院を決定するという制度ができ、すでに運用が始まっています。それは、従来のような知事の行政命令による「措置入院」とは違い、「司法制度」に組み入れられたことを意味します。
 そこには、多くの問題がありますが、ここでは、一般の精神医療のほかに、とくに「司法精神医療」という言葉がよく使われるようになっていることから、その意味を吟味しておく必要があることを指摘しておきたいと思います。
 司法精神医療(医学)が、司法(刑事)制度という場で行われる医療であるという意味であれば、これまでにも、刑務所内の「矯正医療」のほか、精神鑑定に関わる医療業務がありましたので、これに加わる「指定病院内の医療」ということになるでしょう。
 しかし、問題は、そこで与えられるべき「精神医療の内容」が一般の精神医療の場合と同じなのか、違うとすればどこが違うのかという点にあります。上述した論文の中には、「病状」は一般の精神障害者と変わらないのに「手厚い医療」が必要なのは、対象者の「再発防止」としての精神医療だからといい、さらに、より直裁に「再犯予防」のための医療と明言するものもあります。疾病に起因する暴力行為の評価と防止のための教育効果を持つ医療が一般の精神医療と大きく異なる点であるといわれるのです。そして現に、このような司法精神医学の研究と評価方法の開発に多額の科学研究費が投じられています。
 しかし、その結果として、本法の指定医療機関での入院医療が特化することになれば、退院後、あるいは通院時の処遇を一般の精神医療の現場につなげて社会復帰を図るという努力が後退し、精神医療保健福祉法を土台として精神医療を充実していくという方向にそぐわなくなるのではないかと危惧されます。
 
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by nakayama_kenichi | 2007-01-25 10:47