最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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罰金刑の感銘力

 窃盗罪にも罰金刑を加えるという改正案が提案されていることは、このブログでも触れましたが(今年3月)、その後、この法案は議会を通過し、すでに施行されています(今年6月)。
 私自身は、3月の段階で法制審議会の論議を検討する論文の執筆を開始していましたが、その後、妻が急死するという不測の事態に見舞われたため、一時中断していました。しかし、このままでは立法の経過が忘れ去られてしまうことになりかねないと判断し、ようやく執筆を再開しました。11月末までに書き上げ、12月以降の「判例時報」に連載される予定です。
 ところで、今回の法改正の主たる内容が、公務執行妨害罪と窃盗罪について、自由刑のほかに罰金刑を加えるものだから、最近見られるような重罰化一辺倒ではなく、処罰を若干でも緩和する方向のものではなかろうかというのが常識的な観測でしょうが、当局(法務省)の意図は決してそんなものではないということはこの前に指摘したところです。
 この点を象徴的に示したと思われる立案当局者の発言部分を、法制審議会刑事法(財産刑関係)部会の議事録の中から引用しておきます。「私どもとしては、罰金刑というものに刑罰として相応の、やはり感銘力、威嚇力というものを期待しているということでございまして、それを今の現状と見比べましたときに、自由刑だけではどうも処理に困っていると、そこに罰金刑の持つ感銘力、威嚇力を当てはめれば、ちょうどその現状に対処できるのではないかと、そこの部分に、必要性が顕著と思われる部分に、今回導入を考えたということです」。
 これまでは、自由刑(とくに短期自由刑)の弊害を避けるために、自由刑のような大きな社会的コストのない罰金刑をできるだけ多く用いるというのが常識的な見解であったにもかかわらず、今や自由刑の感銘力を越えて罰金刑にまで感銘力と威嚇力を求めるというのですから、事態はただ事ではない方向に動いていることを痛感せざるを得ないのです。
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by nakayama_kenichi | 2006-10-14 13:58