山下邦也『オランダの安楽死』
2006年 03月 30日
「私自身は、山下氏の直接の指導教授ではなかったが、京大の宮内裕、平場安治の両教授が亡くなられた後、刑法読書会などの研究会を通じて、研究上の交流を続ける過程で、師弟関係に似た親交関係が生まれた。その中で、私は山下氏がオランダに興味があることを知り、安楽死の研究をしてはどうかと勧めたことがあったと記憶する。山下氏は、その期待に見事に応えてくれて、1990年以降、オランダの安楽死という問題領域について、相次いで翻訳・紹介を含む分厚い本格的な論稿を、文字通り矢継ぎ早に公表されることになった。オランダ人専門家のペーター・タック教授との公私にわたる親交には、私も恩恵に浴することになり、有意義な国際交流の機会を味わうことができた。
私は、山下氏が亡くなる数年前から、これまでの業績を一冊の論文集にまとめるように勧め、山下氏もその気になって準備していたようであるが、生来の慎重さと遠慮深さのため実現に至らないうちに終わってしまったのはきわめて残念である。
しかし、私としては「オランダの安楽死」に関する山下氏の生前の業績は、是非ともまとめて公刊する必要があると考えるようになり、出版社の成文堂にお願いし、「遺稿集」という形で公刊するという企画を立て、ここにようやく実現することができた」。
私は、今、できたばかりの本書を手にして、山下さんの思い出を偲ぶとともに、自分の著書が出来たとき以上に嬉しい気持ちで一杯である。