心神喪失者等医療観察法の6ヶ月
2006年 01月 14日
第1は、指定入院医療機関の状況である。法施行時には武蔵病院(東京)と花巻病院(岩手)の2カ所しかない状態で見切り発車したことが重大な足かせになっている。厚労省は急遽、東尾張病院(名古屋)に医療観察法病棟(15床)を作り急場を凌いだが、いずれ満杯になるおそれがつきまとっている。しかも、この種の施設を増やそうとしても、十分なスタフが集まらないという皮肉な現象が生じている。
第2は、本法による申立てと決定の状況である。2005年12月16日現在の集計では、検察官による申立て件数は、全部で122件に及び、予想されたよりも多い。裁判所による審判の結果は、入院32件、通院16件、不処遇5件、却下3件の計56件となっている。予想された入院決定に比べて、通院及びそれ以外の決定が意外に多いという結果は、とくに付添人(弁護士)の活動によるところが大きいものと思われる。
第3は、入院決定を受けた者の入院先である。武蔵病院が20人、花巻病院が9人、東尾張病院が3人で、計32人となっているが、この数は年末までにかなり増えており、武蔵病院では回復期の病床がすでに満床になっているという情報もある。
本法の施行は決して順調とはいえず、一般の精神医療との間に多くの矛盾点を生み出しており、それは本法の見直しの必要性を強く示唆するものであるが、しかし他方では、とくに本法が予想しなかったところで、たとえば「鑑定入院中の医療こそが重要ではないか」という問題意識の中で、本法を対象者のための「医療法」として充実して行く方向が模索されるという展望も生まれていることに注目すべできである。