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最近大学を離れ、論考を公表する機会が少なくなってきました。論文として公表する以外の資料や感想文などを公開する場を持ちたいと考え、このブログを開設しました。


by nakayama_kenichi
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セクハラ懲戒の指針

 以前、言葉によるセクハラの限界を問題にしたことがあるが、人事院の「懲戒処分の指針」(平13)によると、「相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動(性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする」となっている。そこには次のような問題がある。
 第1に、懲戒処分の対象となる「わいせつな言辞等の性的な言動」の意味と範囲に関して、指針に例示された行為の中には「性的なジョーク」や「容姿・服装に関するからかい」といったものが含まれておらず、むしろ「わいせつな」言辞という強い性格づけがなされているのが注目される。それは、性的な関心・要求に基づく性的な発言というよりもさらに限定されたものを意味することになるであろう。
 第2に、わいせつな言辞等の性的な言動がなされる際に、「相手の意に反することを認識の上で」という行為者の主観的な要件が必要とされている点も重要である。これは、たまたまわいせつな性的発言をし、それが相手の意に反したとしても、それだけでは不十分であって、意に反することを知った後、なおわいせつな発言をした場合にはじめて要件を満たすことを意味する。このことは、わいせつな言辞等の性的な言動という客観的な要件に対する主観的な故意が必要であるという当然のことを明示したものである。
 ところが、地方自治体の懲戒処分の指針の中には、単に「相手の意に反し」とするのみで、「相手の意に反することを認識の上で」という要件を除外したものが見られる。その結果として、相手の女性が不快と感じればセクハラになるという異常な論理がまかり通ることになりかねないおそれがあることを警戒すべきである。
 
by nakayama_kenichi | 2005-12-22 17:02